金属加工の中でも最も需要が高いアルミですが、旋盤による加工を主な切削とする場合は、依頼する製造業の選択に注意が必要です。今回はアルミの旋盤加工の特徴や工場選択のポイントと注意点をご紹介します。アルミの旋盤加工業者は数多く存在しますので、よく吟味して業者を選んでください。
目次
アルミ加工のメリット。スチールとの比較
アルミはスチールと比べると材質が柔らかく、製品強度はそれほど高くありません。一方でアルミ自体は不活性で毒性もなく、またアルミの原料が食品に吸着したり、食器などの製品に付着して腐食をうながしたりすることもないため、調度品や缶詰、ジュース缶をはじめ、人々の生活には欠かせない金属となっています。
価格帯はスチールや鉄と比べると高価ですが、リサイクル率も高いので、買取価格も他の金属製品と比較して高価であることが特徴として挙げられます。
アルミ旋盤加工も影響大。価格が高騰している背景
新型コロナ以降、アルミ価格が徐々に高騰しており、2022年後半ではコロナ前と比較すると1.2~1.5倍となっています。アルミ以外の金属素材全般が価格を上げていますが、それに加えてエネルギー価格の高等と円安により物流コストもじわじわと上がっています。
アルミ旋盤の加工をする調達担当者にとっても影響は大きく、従来の見積もりでは請け負えない工場が続出しております。
メーカー側が影響を最小限に抑えるためには、①海外に独自の調達網を持っている、②商社や2次店、販売店を介さず直接アルミ素材を輸入している、といった工場を探すのがおすすめです。
旋盤加工におけるアルミの注意点とデメリットは?
アルミはご存知の通り軽く軟質の金属素材となるため、合金を含めて幅広い分野と産業で活躍しています。そのアルミは旋盤による切削加工もしやすいため、外径加工、内径加工、ねじ切りなどあらゆる旋盤加工に適しています。
しかし、その一方で柔らかい材質のため、切り屑がでやすく、旋盤加工の際に屑がバイトに絡まって精度が落ちる、といった問題もアルミ加工にはありがちです。そのため、最新のマシニングセンタやNC旋盤であっても油断は許さず、しっかりと技術者の目利きによる加工チェックが必要となります。
アルミの旋盤加工のコツと切削加工のポイント
アルミの旋盤加工のコツや切削加工をするポイントは大きく分けて2点あります。
1.アルミの旋盤加工時は傷がつきやすい
アルミは軽量かつ軟質のため、ステンレスなど他の金属素材と同様の加工条件で旋盤加工をしようとすると、高い確率で表面に傷がつきます。
これを防ぐためには、旋盤加工時はアルミ表面にテープを張ったり、アルミをチャックで締める際に緩衝材を含ませるといった対策が旋盤時のコツとなります。
2.量産時や細い径を旋盤加工する場合のコツとポイント
細い怪の加工品の旋盤加工をしようとすると、旋盤加工時に外径が逃げたり、量産時に加工精度の安定性が悪く、加工品によって精度に微妙な差が生じてしまうことがよくあります。
そのため、「荒加工・中仕上げ・仕上げ」の3つの工程に加工を分けるのがコツになります。ポイントとしては、3つの工程にそれぞれ達成目的を作り、目的に沿って旋盤をすることです。
アルミの旋盤加工のチャック圧について
上記で少し触れましたが、アルミやプラスチックのような軟性のも加工物を旋盤加工するときは、チャックに当たる部分に沈みが生じてしまうことがあるため、緩衝材や入れ子を嵌めるのがおすすめとなります。
また、チャック圧を弱くする必要も場合によって発生しますが、「どのくらい弱くすればいい?」という問いに答えるのは少々難しいです。厳密に行うのであれば、所定の計算式を用いることもできますが、実際は技術者のこれまでの経験で“あたり”を付けて旋盤加工をすることが多いです。経験の浅い若い技術者ばかりがいる工場だと、つまづく恐れが高いので、依頼する調達担当者は注意しなければなりません。
アルミの旋盤加工時の切削条件。回転数に気を付けよう
アルミの旋盤加工をする際、慣れている技術者でも悩ませる問題が「切り子が切断されないためワークが傷つく」ことと「むしりが大量に発生する」ことではないでしょうか。
いずれも不良率を上げてしまうトラブルとなりますが、アルミを通常の切削条件で旋盤加工すると、かなり高い確率で発生します。
このようなトラブルが旋盤加工で起きないようにする切削条件としては、「仕上げ代を大目にとる」、「切り込み量を多めにとる」、「キリやエンドミルを使う」、「作動と停止を繰り返して切り子を常に排除する」などと幾つか挙げられますが、業者や技術者によってやり方はさまざまです。
また、アルミの旋盤加工時は上記の問題が出ないよう、回転数を最初から100m/min程度に落として加工することもあります。また、注意点としては内径の荒加工は慎重に行わなければ、バイトはもちろんのこと、最悪製品自体がダメになってしまいます。上記で触れたようにキリやエンドミルを荒加工をする前に多用することも推奨されます。
アルミの旋盤加工で切りくずによる商品の傷つきが問題
アルミの旋盤加工に慣れない技術者が切削にあたると、外径・内径ともに旋盤加工時に切りくずが大量に発生します。切りくずは工具に癒着すると加工精度が落ち、さらに工具の寿命も縮みます。また、発生した切りくずが加工品を傷つけて不良品となることもよくあります。
ばねやカール状の切りくずがアルミ旋盤加工で発生することはよくありますが、そこで不良を出さずに切削を行えるかは、加工環境はもとより技術者のスキルと経験によるところが大きいです。
アルミのドライ加工。溶着が心配
アルミのドライ加工をする場合、慣れない技術者が作業に当たると、工具への溶着が懸念されます。アルミはしばしば溶着しやすいと言われていますが、実はそんなことはなく、特に6000番台であれば硬いため溶着を心配する必要はそれほどありません。もし切削加工時に工具にアルミが溶着してしまう場合は、第一前提としてアルミを含む金属が工具に溶着するメカニズムをしっかりと把握していないことが原因に挙げられます。
アルミの溶着する原因は温度と切削加工の速度にあります。特に加工速度は速くとも遅くとも溶着の原因となるので、カタログ推奨値だけではなく、経験による手触りが重要となります。
個人が業者にアルミ旋盤加工を依頼する方法
個人が切削加工業者にアルミの旋盤加工を依頼したい場合、よくある問い合わせが「これと同じの作ってください。値段はいくらですか?」と写真だけ添付されているケースです。写真だけでは具体的な材質がわかりませんし、図面がなければ詳しい加工工程も検討できません。一般的に見積もりの作成費用は無料ですが、実際の作成は手間もかかりますので、「個人の依頼はお断りしている」という工場も少なくありません。
個人がアルミの旋盤加工を業者に依頼するポイントとしては、「図面がない場合はできるだけ寸法を詳しく記載する」、「多面加工は控える」ことが挙げられます。多面加工をする場合は詳細の寸法を記した図面を作成しなければなりませんし、5軸加工機のような高価な工作機械を使う必要があり、機械チャージと呼ばれる手数料が発生します。
また、アルミは個人の依頼としては材料費が高くなりがちなので、アルミではなく普通の鉄に素材を変えるのも手です。特にSS400という番号の鉄であれば安価です。
旋盤加工依頼のポイント。アルミ合金の特徴をしっかりと提案してくれるか否か
旋盤加工を工場に依頼する場合、ネットで調べてみると分かるのですが、ほとんどの切削工場がアルミ加工を請け負っています。旋盤とフライスがない切削工場などありませんし、アルミはステンレスと同様に世界で最も需要のある金属素材のため、請け負わない工場などありません。
そこで、アルミの旋盤加工を依頼する工場を探す際は、「アルミ合金の特徴を提案してくれる」ところを選んでみてはいかがでしょうか。
アルミ合金の特徴
アルミは合金としても非常に優れていて、銅、マグネシウム、シリコン、マンガン、亜鉛を合金素材にあてがうことも多く、主に耐摩耗性、耐蝕性、強度をどのくらいのレベルまで引き上げるかによってアルミの種類を決めます。
アルミを素材として製品・部品は、日用品や台所用品から自動車、スポーツ、宇宙産業など幅広く使われるため、顧客の要望は十人十色。そのため、工場側は図面とヒアリングをもとに、アルミの性質を理解した上での提案をする知識と経験力が求められます。
アルミ合金の特徴・利用例・デメリットとは
アルミ合金は導電性、耐食性、熱伝導性に優れています。一方で通常のアルミニウムよりも強度を高くすることはできますが、それでも他の金属素材と比較すると柔らかいため、利用シーンは選ぶ必要があります。
また、アルミは融点が低く削りやすいため金型作成にも使われ、射出成形で量産化することもできますが、その一方で金型の精度が落ちやすく、メンテナンスが必要となります。
アルミ合金は建材、船舶用材、フィン材、工業用部品、耐熱用ネジ、タンク、自動車ホイール、カメラ、電線、航空機部品など幅広い用途で利用・導入されています。
アルミ合金のデメリットとしては、①強度が上がりづらいこと、②合金素材によって旋盤含む切削加工の条件が変わること、が挙げられます。特に②は技術や知識だけではなく実績経験が必要となるため、素材特性をよく理解していなければなりません。
アルミの旋盤は最新の加工機よりも技術者が重要
アルミの旋盤は多くの向上で請け負っていますが、上述したように切り屑の対処や刃物への癒着の制御を常にしなければなりませんので、技術者の経験と工場が保有している過去のデータが高精度を可能とします。
アルミの金属加工工場を大阪で探すポイントや注意点
質の高い技術者がいる製作所でアルミの金属加工を依頼したい場合は、ものづくり都市の大阪市近郊で探してみるのが良いでしょう。大阪市内に拠点を置いている工場であれば、その多くが優秀な技術者たちの集まりと判断できます。
近場で探す必要はない。大阪の金属加工工場をネットで探す
人によっては「やっぱり直接会って話せるところと付き合いたい」と考える人も多いでしょう。しかし、現在はzoomのようなオンライン会議システムを使って対面で商談することもできますし、本当に信頼のおける製作所が自社の近場にあるとは限りません。
2000年以降はインターネットが急速に普及しているので、ネットを活用することによって大阪含む全国の優良業者を見つけることができるのは、非常に大きな魅力となります。
大阪の金属加工工場探し。相見積もりが必要な理由と注意点
上述したようにものづくり都市である大阪には100を超す金属加工製作所が点在しています。しかし、そのすべてが優良で自社の希望するアルミ加工を請け負ってくれるわけではありません。
そのため、まずは複数社をピックアップしたのち、相見積もりをして金額の相場を確かめるといいでしょう。業者の中には値引き交渉されることを見越して最初は割高で設定しているところと、値引き交渉に応じない代わりに適正料金で提示するところがあります。どちらが良いか悪いかではなく、自社の予算内で対応してくれる柔軟さがあるかどうかを判断するようにしましょう。
また、金属加工は基本的に大ロットの方が値引き交渉に応じやすくなります。そのため、イニシャルコストを知りたい場合でも、本生産時のMAXのロット数を工場に伝えてることによって思わぬ値引きをしてくれる可能性があります。
海外に工場を持たない町工場をおすすめしない理由
大阪の町工場の中には本社工場1つで創業何十年という製作所も多くあります。しかし、上述したように昨今はアルミやステンレス、フッ素樹脂などあらゆる材質が高騰しています。
そのため、海外に独自の調達網がなく、日本の商社や販売店からしか仕入れ先がない町工場では仕入れコストが上がり、続々と見積もり価格が上がっています。
コストダウンを製作所に要求したい場合は、海外に自社工場があるところを探すと、安定した価格と納期を約束してくれるかもしれません。
納期はしっかりと約束を取り付けておく
大阪の製作所の中には気質柄、納期をあまり守ってくれない工場もあります。生産コストが高くつく場合、工場側に利益が少ないため、取引のルールを厳守しないこともあります。
また、切削以外の工程も依頼する場合は、工場は提携先に委託することになります。加工に絡む業者が多ければ、それだけ納期管理が難しくなるので、結果として数日間の遅れは頻繁に発生してしまいます。
アルミの旋盤加工は大阪のフィリールにお任せください
本社を大阪に置くフィリールは、アルミ旋盤に強い自信と実績を持つ切削工場です。試作品から本生産までの道のりの提案はもちろん、1万個、10万個以上の量産・数物案件も積極的に受注しております。
上述したように、アルミの切削加工は高い精度を出すことは可能ですが、加工スピードが遅く、量産加工に適しているとは言えません。しかし、フィリールでは日本とベトナムに切削工場を有し、また部品生産であれば、中国に1万平方メートル以上の大規模工場で作ることができます(弊社代表は中国工場の取締役副社長です)。そのため、アルミの量産加工であっても、短納期・低予算で受注することが可能です。
低コスト化が可能。フィリールは日本&海外加工が可能
フィリールではご依頼いただいた切削加工は日本の大阪本社工場、ベトナム工場、中国工場で加工することができます。少ロットかつ高精度を求める場合は日本工場、コストダウンを実現したい場合はベトナム工場、量産化は中国工場で請け負うのが一般的です。
金属素材の仕入れも商社を介さず自社で現地調達ができるため、このご時世であっても安定した数量・価格で供給することができるのも弊社の特徴となります。
他社で断られた案件はもちろん、「コロナ以降は加工見積もりが高騰していて、もっと安くできる工場を探している」といった調達関係者の方も、一度ご相談ください。アルミの旋盤加工をご希望の方は、是非一度フィリールにお問合せください。