析出硬化系ステンレス鋼は、析出物の形成によって高強度を有するステンレス鋼のことで、SUS630などの種類があります。これらの合金は、強度と耐食性に優れているため、バルブやシャフトが主な用途です。本記事では、析出硬化系ステンレス鋼の特徴と加工方法について、詳しく紹介します。他のステンレス鋼との違いを知りたい方は、最後までご覧ください。
析出硬化系ステンレス鋼とは?
析出硬化系ステンレス鋼とは、熱処理によって析出物を発現させ、微細分散させた析出物が強度の向上に寄与する合金です。この強度向上の現象は「析出硬化」と呼ばれ、英語表記のPrecipitation Hardeningの頭文字をとって「PHステンレス鋼」とも呼ばれています。
析出物の種類は多岐にわたり、析出硬化系ステンレス鋼の種類も豊富です。析出物の形成のため、Cu(銅)やAl(アルミニウム)といった元素が添加されます。これらの析出物を有するステンレス鋼は、強度や靭性に優れており、耐食性が良好なため様々な用途で使用されます。
析出物の種類は多岐にわたり、析出硬化系ステンレス鋼の種類も豊富です。析出物の形成のため、Cu(銅)やAl(アルミニウム)といった元素が添加されます。これらの析出物を有するステンレス鋼は、強度や靭性に優れており、耐食性が良好なため様々な用途で使用されます。
析出硬化系ステンレス鋼の種類
代表的な析出硬化系ステンレス鋼は、次の3つです。
・SUS630
・SUS631
・SUS631J
代表的な合金「SUS630」は、Cuを添加することで析出硬化性を向上したステンレス鋼です。一般的に1020~1060℃で固溶化熱処理を施した後、希望の硬さに応じた温度で析出硬化処理(熱処理)を実施します。固溶化熱処理は、金属材料の偏析をなくしたり、添加元素を金属母相に固溶させたりする目的で実施します。
析出硬化処理では、熱処理温度が高くなるほど得られる硬さが低くなるので、最終製品の硬さに合わせた熱処理温度に制御することが重要です。例えば、SUS630では430~630℃の析出硬化処理を施すと、硬さ45~30HRCの特性が得られます。このように、熱処理条件によって硬さを調整できることは、析出硬化系ステンレス鋼の特徴です。
一方、SUS631はAlを添加することで析出硬化性を向上させた合金です。成分の一つであるNi(ニッケル)も、硬さの向上に寄与しています。また、SUS631Jといったステンレス鋼はアルファベット「J」が名称に含まれており、日本(Japan)独自の規格であることを意味しています。
・SUS630
・SUS631
・SUS631J
代表的な合金「SUS630」は、Cuを添加することで析出硬化性を向上したステンレス鋼です。一般的に1020~1060℃で固溶化熱処理を施した後、希望の硬さに応じた温度で析出硬化処理(熱処理)を実施します。固溶化熱処理は、金属材料の偏析をなくしたり、添加元素を金属母相に固溶させたりする目的で実施します。
析出硬化処理では、熱処理温度が高くなるほど得られる硬さが低くなるので、最終製品の硬さに合わせた熱処理温度に制御することが重要です。例えば、SUS630では430~630℃の析出硬化処理を施すと、硬さ45~30HRCの特性が得られます。このように、熱処理条件によって硬さを調整できることは、析出硬化系ステンレス鋼の特徴です。
一方、SUS631はAlを添加することで析出硬化性を向上させた合金です。成分の一つであるNi(ニッケル)も、硬さの向上に寄与しています。また、SUS631Jといったステンレス鋼はアルファベット「J」が名称に含まれており、日本(Japan)独自の規格であることを意味しています。
析出硬化系ステンレス鋼の加工方法
ステンレス鋼は難削材であり、加工が難しい材料として知られています。具体的には、ステンレス鋼の熱伝導率は低いため、加工時に発生する熱が材料外部に逃げにくいといった課題があります。そのため対策せずに加工を実施すると、工具にダメージを与えてしまうので要注意です。
析出硬化系ステンレス鋼の加工方法は、主に次の3つです。
・切削加工
・曲げ加工
・溶接加工
それぞれ詳しく解説します。
析出硬化系ステンレス鋼の加工方法は、主に次の3つです。
・切削加工
・曲げ加工
・溶接加工
それぞれ詳しく解説します。
切削加工
切削加工は工作機械や工具を用いて、切削したり穴をあけたりする加工方法です。工作機械には、マシニングセンターやNC旋盤などの装置が用いられます。切削加工では、ステンレス鋼の熱伝導率の低さを考慮した対策が欠かせません。
例えば、工具へのダメージを軽減するために、耐摩耗性に優れた切削工具を使用すると良いでしょう。表面にコーティングを施した工具や、超硬合金からできている工具を使用すると、工具の交換頻度を減少できます。
このほか、冷却クーラントを使用すると、工具に溜まりやすい熱を効率よく逃がせます。一般的には空気を吹き付けることで冷却できますが、冷却効率は高くないため熱が溜まる可能性があり注意が必要です。そこで、空気より冷却効率が高い「油」を使ったクーラントが効果的です。切削加工は専門性の高い知識が必要になるため、加工が不安な方はフィリールまでご相談ください。
例えば、工具へのダメージを軽減するために、耐摩耗性に優れた切削工具を使用すると良いでしょう。表面にコーティングを施した工具や、超硬合金からできている工具を使用すると、工具の交換頻度を減少できます。
このほか、冷却クーラントを使用すると、工具に溜まりやすい熱を効率よく逃がせます。一般的には空気を吹き付けることで冷却できますが、冷却効率は高くないため熱が溜まる可能性があり注意が必要です。そこで、空気より冷却効率が高い「油」を使ったクーラントが効果的です。切削加工は専門性の高い知識が必要になるため、加工が不安な方はフィリールまでご相談ください。
曲げ加工
曲げ加工は、板材を曲げて任意形状に加工する方法です。曲げ加工では「スプリングバック」と呼ばれる現象に注意しなければならず、材料の知識が乏しい場合は難しい手法です。スプリングバックとは、加工後に元の形に戻ろうとする現象であり、最終製品が想定していた形状と異なってしまう可能性があります。
特に、ステンレス鋼は曲げ加工が難しい材料です。なぜなら、ステンレス鋼は他の材料に比べて、スプリングバックの影響が大きいためです。そのため、元に戻る寸法を計算したうえで加工しなければなりません。
さらにステンレス鋼は、熱伝導率が低いので板材に溜まった熱が逃げにくく、加工時に温度差が生じて「割れ」が発生しやすくなります。ステンレス鋼の加工では、加工経験が豊富な企業や、材料について熟知している専門家への依頼がおすすめです。
特に、ステンレス鋼は曲げ加工が難しい材料です。なぜなら、ステンレス鋼は他の材料に比べて、スプリングバックの影響が大きいためです。そのため、元に戻る寸法を計算したうえで加工しなければなりません。
さらにステンレス鋼は、熱伝導率が低いので板材に溜まった熱が逃げにくく、加工時に温度差が生じて「割れ」が発生しやすくなります。ステンレス鋼の加工では、加工経験が豊富な企業や、材料について熟知している専門家への依頼がおすすめです。
溶接加工
溶接加工は、2種類以上の異種金属を溶かした後、冷却によって接合させる技術です。溶接の種類は豊富であり、次の方法があります。
・TIG溶接
・MIG溶接
・被覆アーク溶接
TIG溶接は、電極にタングステンを使用し、アルゴンなどの不活性ガス雰囲気中で溶接する方法です。タングステンの英語表記「Tungsten」と、不活性ガス「Inert Gas」の頭文字から「TIG」と呼ばれています。TIG溶接はステンレス鋼の溶接で一般的に使用され、精度良く製品を仕上げられるのが特徴です。
MIG溶接は、電極に金属材料を用いて実施する方法で、生産性の高い溶接ができます。一方、電極の金属材料(棒状)に被覆材で覆って溶接する方法が、被覆アーク溶接です。
ステンレス鋼は種類によって性質が大きく異なるため、溶接加工が難しいと言われています。そのため、ステンレス鋼の加工では加工だけでなく、材料の知識も大切です。
・TIG溶接
・MIG溶接
・被覆アーク溶接
TIG溶接は、電極にタングステンを使用し、アルゴンなどの不活性ガス雰囲気中で溶接する方法です。タングステンの英語表記「Tungsten」と、不活性ガス「Inert Gas」の頭文字から「TIG」と呼ばれています。TIG溶接はステンレス鋼の溶接で一般的に使用され、精度良く製品を仕上げられるのが特徴です。
MIG溶接は、電極に金属材料を用いて実施する方法で、生産性の高い溶接ができます。一方、電極の金属材料(棒状)に被覆材で覆って溶接する方法が、被覆アーク溶接です。
ステンレス鋼は種類によって性質が大きく異なるため、溶接加工が難しいと言われています。そのため、ステンレス鋼の加工では加工だけでなく、材料の知識も大切です。
析出硬化系ステンレス鋼の組織
析出硬化系ステンレス鋼は、CrやNiの含有量によって組織が変化します。具体的な組織状態は、シェフラーの組織境界線図を用いると判断できます。例えば、CrとNiの含有量が少ない場合、マルテンサイト組織と呼ばれる組織が優位になります。また、CrとNiの含有量が多くなると、オーステナイト組織やフェライト組織といった比較的軟らかい組織が優位です。
また添加元素は、それぞれ役割が異なるため、用途に合わせて種類や添加量が調整されます。CuやMoは、耐食性を向上させる役割があり、耐食性が必要な場合に添加されます。ただし、Cuは靭性を低下する原因になるため、添加量には注意が必要です。
このほか、NiとCr添加も耐食性向上に有効です。Niは、AlとNiとともに析出硬化に寄与するため、高強度化も狙えます。一方Crは炭化物を生成するので、強度が低下することに注意すると良いでしょう。
また析出硬化系ステンレス鋼全般として、C(炭素)量が多いと強度は高くなりますが、応力腐食割れに弱くなってしまいます。そのため製品として使用する場合は、できる限り炭素量を低減することが求められます。
また添加元素は、それぞれ役割が異なるため、用途に合わせて種類や添加量が調整されます。CuやMoは、耐食性を向上させる役割があり、耐食性が必要な場合に添加されます。ただし、Cuは靭性を低下する原因になるため、添加量には注意が必要です。
このほか、NiとCr添加も耐食性向上に有効です。Niは、AlとNiとともに析出硬化に寄与するため、高強度化も狙えます。一方Crは炭化物を生成するので、強度が低下することに注意すると良いでしょう。
また析出硬化系ステンレス鋼全般として、C(炭素)量が多いと強度は高くなりますが、応力腐食割れに弱くなってしまいます。そのため製品として使用する場合は、できる限り炭素量を低減することが求められます。
析出硬化系ステンレス鋼の用途
析出硬化系ステンレス鋼は強度や靭性、耐食性に優れるため、幅広い用途に使用可能です。具体的には、以下の用途に用いられています。
・シャフト
・バルブ
・ボルト
・耐食性が要求されるプラスチック金型
・ノズル
いずれも製品として使用される際、固溶化熱処理と析出硬化処理が施されます。
・シャフト
・バルブ
・ボルト
・耐食性が要求されるプラスチック金型
・ノズル
いずれも製品として使用される際、固溶化熱処理と析出硬化処理が施されます。
まとめ
析出硬化系ステンレス鋼は、析出硬化によって析出物を発現させ、強度・靭性・耐食性に優れる合金です。ただし、加工が難しい材料であるため、加工の際は材料の知識や加工経験が欠かせません。フィリールでは難削材の加工実績が豊富であり、ステンレス鋼の加工も承っております。ステンレス鋼の加工でお悩みの方は、ぜひフィリールまでご相談ください。