SCM435とSCM 420は、クロム鋼に対してMo(モリブデン)を添加した合金です。これらの合金の違いは、主に炭素量の違いです。本記事では、SCM435とSCM 420の違いや加工方法について説明します。材料の特徴を知り、加工に役立てたい方は最後までご覧ください。
SCM435、SCM 420とは?
SCM435とSCM 420は、クロム鋼にMoを添加した「クロムモリブデン鋼」です。クロム鋼は、Cr(クロム)とMn(マンガン)を添加した鋼のことで、機械構造用炭素鋼として使用されています。
一方でクロムモリブデン鋼は、機械構造用合金鋼に分類され「クロモリ」と呼ばれる合金です。添加元素はC(炭素)やCr、Moであり、クロム鋼よりも硬度に優れる特徴があります。ただし、ステンレス鋼と比較して耐食性が劣ることに注意が必要です。
添加元素Crは合金表面に酸化皮膜を形成するため、鋼が腐食から保護される役目を果たします。しかし、クロムモリブデン鋼はCr含有量が少ないため、腐食環境から十分に保護できる皮膜を形成できません。
一方でクロムモリブデン鋼は、機械構造用合金鋼に分類され「クロモリ」と呼ばれる合金です。添加元素はC(炭素)やCr、Moであり、クロム鋼よりも硬度に優れる特徴があります。ただし、ステンレス鋼と比較して耐食性が劣ることに注意が必要です。
添加元素Crは合金表面に酸化皮膜を形成するため、鋼が腐食から保護される役目を果たします。しかし、クロムモリブデン鋼はCr含有量が少ないため、腐食環境から十分に保護できる皮膜を形成できません。
SCM435とは?
SCM435はクロムモリブデン鋼の中でも、とくに硬度が高い合金です。JIS規格(日本工業規格)では、ブリネル硬さが269~331HBWと定義されています。ちなみにクロムモリブデン鋼全般に見られる記号「SCM」は、Steel(鉄)、Cr(クロム)、Mo(モリブデン)の頭文字に由来しています。
SCM435Hのように、名称の後に記号「H」がつく場合は、焼入れによる熱処理ができる合金です。焼入れは硬さを向上するために施す熱処理で、SCM435Hをはじめとした合金は「H鋼」と呼ばれています。
SCM435の成分規格は、以下のとおりです。
・C(炭素)0.33~0.38%
・Si(シリコン)0.15~0.35%
・Mn(マンガン)0.60~0.90%
・P(リン)0.030%以下
・S(硫黄)0.030%以下
・Ni(ニッケル)0.25%以下
・Cr(クロム)0.90~1.20%
・Mo(モリブデン)0.15~0.30%
SCM435Hのように、名称の後に記号「H」がつく場合は、焼入れによる熱処理ができる合金です。焼入れは硬さを向上するために施す熱処理で、SCM435Hをはじめとした合金は「H鋼」と呼ばれています。
SCM435の成分規格は、以下のとおりです。
・C(炭素)0.33~0.38%
・Si(シリコン)0.15~0.35%
・Mn(マンガン)0.60~0.90%
・P(リン)0.030%以下
・S(硫黄)0.030%以下
・Ni(ニッケル)0.25%以下
・Cr(クロム)0.90~1.20%
・Mo(モリブデン)0.15~0.30%
SCM 420とは?
SCM 420はクロムモリブデン鋼の一種であり、SCM435より炭素量が少ない合金です。一般的に、炭素量が多いほど鋼の硬度は向上します。C(炭素)が鉄に溶け込むことで、硬い組織を形成するためです。
SCM420では硬度を向上する場合、浸炭と呼ばれる熱処理を利用します。浸炭は、材料表面のみにCを溶け込ませる熱処理です。材料内部までCが溶け込まないため表面は硬く、内部は軟らかい特性に調整できます。
SCM 420の成分は、以下のとおりです。
・C(炭素)0.18~0.23%
・Si(シリコン)0.15~0.35%
・Mn(マンガン)0.60~0.90%
・P(リン)0.030%以下
・S(硫黄)0.030%以下
・Ni(ニッケル)0.25%以下
・Cr(クロム)0.90~1.20%
・Mo(モリブデン)0.15~0.25%
SCM435に比べると、C含有量は低く規定されており、Moの最大含有量は低い特徴があります。
SCM420では硬度を向上する場合、浸炭と呼ばれる熱処理を利用します。浸炭は、材料表面のみにCを溶け込ませる熱処理です。材料内部までCが溶け込まないため表面は硬く、内部は軟らかい特性に調整できます。
SCM 420の成分は、以下のとおりです。
・C(炭素)0.18~0.23%
・Si(シリコン)0.15~0.35%
・Mn(マンガン)0.60~0.90%
・P(リン)0.030%以下
・S(硫黄)0.030%以下
・Ni(ニッケル)0.25%以下
・Cr(クロム)0.90~1.20%
・Mo(モリブデン)0.15~0.25%
SCM435に比べると、C含有量は低く規定されており、Moの最大含有量は低い特徴があります。
SCM435とSCM 420の加工方法
SCM435やSCM 420など、クロムモリブデン鋼で主に使用される加工方法は切削加工です。代表的な切削加工には「旋盤加工」や「フライス加工」があります。
旋盤加工
旋盤加工は、クロムモリブデン鋼を回転させながら、工具をあてることで加工する方法です。精度が高く製品を作製できることがメリットで、精度が0.001mmオーダーで仕上げられます。
旋盤加工は手動で加工する方法のほかに、コンピューター制御で加工するNC旋盤があります。コンピューターで制御するため作業者の力量に依存されず、一定の加工精度を得られることが特徴です。旋盤加工では様々な形状に加工でき、たとえば以下の種類があります。
・外径加工;材料の外形を削る加工
・デーパ加工:すり鉢状に外形を削る加工
・穴あけ加工:ドリルで穴をあける加工
・内径加工:材料の内径を削る加工
・溝加工:溝状に削る加工
・突っ切り:溝加工後に材料を切断する加工
・ねじ切り:ねじ山を作る加工
旋盤加工は手動で加工する方法のほかに、コンピューター制御で加工するNC旋盤があります。コンピューターで制御するため作業者の力量に依存されず、一定の加工精度を得られることが特徴です。旋盤加工では様々な形状に加工でき、たとえば以下の種類があります。
・外径加工;材料の外形を削る加工
・デーパ加工:すり鉢状に外形を削る加工
・穴あけ加工:ドリルで穴をあける加工
・内径加工:材料の内径を削る加工
・溝加工:溝状に削る加工
・突っ切り:溝加工後に材料を切断する加工
・ねじ切り:ねじ山を作る加工
フライス加工
フライス加工ではクロムモリブデン鋼を固定して、工具を回転させながら加工します。マシニングセンタをはじめとした「NC工作機械」が主に使用され、一定の精度を維持しながら大量生産できることが特徴です。
NC工作機械を使用すると、作業者による加工仕上げのバラツキを防いだり、24時間いつでも稼働できたりします。とくにフライス加工や穴あけ加工など、複数の加工プロセスを1台に統合した機械がマシニングセンタです。
フライス加工の種類は数多く、主な加工方法は以下のとおりです。
・平面加工:材料の平面を削る加工
・側面加工:材料の側面を削る加工
・段差加工:平面と側面を削り、段差を作る加工
・溝加工:材料に溝を作る加工
また工具の種類も豊富で、次のものがあります。
・エンドミル:外周と底に刃物がついた工具
・正面フライス:外周に複数の刃物がついた工具
・平フライス:外周に刃物がついた筒状工具
・側フライス:外周と側面に刃物がついた円盤状工具
・メタルソー:側フライスを薄くした工具
・溝フライス:外周に刃物がついた円盤状工具
様々な種類があるため、製品形状に合わせて適切に加工方法を選びましょう。失敗したくない方は、加工実績のある企業に依頼するのもオススメです。
NC工作機械を使用すると、作業者による加工仕上げのバラツキを防いだり、24時間いつでも稼働できたりします。とくにフライス加工や穴あけ加工など、複数の加工プロセスを1台に統合した機械がマシニングセンタです。
フライス加工の種類は数多く、主な加工方法は以下のとおりです。
・平面加工:材料の平面を削る加工
・側面加工:材料の側面を削る加工
・段差加工:平面と側面を削り、段差を作る加工
・溝加工:材料に溝を作る加工
また工具の種類も豊富で、次のものがあります。
・エンドミル:外周と底に刃物がついた工具
・正面フライス:外周に複数の刃物がついた工具
・平フライス:外周に刃物がついた筒状工具
・側フライス:外周と側面に刃物がついた円盤状工具
・メタルソー:側フライスを薄くした工具
・溝フライス:外周に刃物がついた円盤状工具
様々な種類があるため、製品形状に合わせて適切に加工方法を選びましょう。失敗したくない方は、加工実績のある企業に依頼するのもオススメです。
SCM435とSCM420の組織
SCM435とSCM 420に含有される炭素量は異なりますが、基本的な組織は同じです。具体的な組織はオーステナイト組織やフェライト組織、パーライト組織であり、熱処理条件を調整することで組織制御できます。
オーステナイト組織は、900℃程度の高温状態で形成される組織です。比較的軟らかい性質を有し、磁石につかない特徴があります。フェライト組織は軟らかい組織であり、加工性に優れている組織です。そのため、オーステナイト組織やフェライト組織の割合が多い合金は、硬度が低い性質をもちます。
一方でパーライト組織は、フェライト組織とセメンタイトが層状になった組織です。セメンタイトとは鉄の炭化物(Fe3C)を指しており、比較的硬いことが特徴です。したがって、パーライト組織はほかの組織に比べて硬い性質を有しています。
パーライト組織に見られる層状組織は、熱処理に伴う冷却時に形成されます。冷却中、鉄に溶けていたCが、最も効率よく析出できる手段が層状析出です。1箇所にまとめて析出されるよりも、界面を作りながら層状に析出することでエネルギーを抑えられます。
これらの組織は熱処理によって決まり、異なる特性を発現することが特徴です。以下にJIS規格で定められている熱処理と、それぞれの特性を紹介します。
(SCM435)
・熱処理:焼入れ830~880℃油冷、焼戻し530~630℃急冷
・引張強さ930MPa以上
・伸び15%以上
・絞り50%以上
・シャルピー衝撃値78J/cm2以上
SCM435は、クロムモリブデン鋼として知られる合金鋼の一種で、高強度や高耐熱性が求められる部品や機械部品などに広く使用されています。SCM435の熱処理には、以下のような工程が含まれます。
・鋼材を加熱する(オーステナイト化):SCM435の鋼材を約800℃〜900℃に加熱し、オーステナイト(非常に硬くて柔軟な組織)にします。
・急冷する(焼入れ):急冷することによってオーステナイトをマルテンサイト(非常に硬くてもろい組織)に変換します。水や油などの冷却媒体を使用することができます。冷却速度が速ければ速いほど、硬度が高くなります。
・再加熱する(焼き戻し):焼き入れによって硬度が高くなりすぎてもろくなったマルテンサイト組織を、適切な温度で再加熱することで、より柔らかく、強度が向上します。
上記の工程によって、SCM435は、高強度、高耐熱性、高靭性を備えた優れた材料になります。ただし、焼入れ後に過剰な加熱を行うと、組織が粗大化し、硬度や強度が低下する可能性があります。また、焼入れや焼き戻しの条件によっても、硬度や強度が変化するため、適切な熱処理工程を行うことが重要です。
(SCM420)
・熱処理:焼入れ(一次)850~900℃油冷、(二次)800~850℃油冷、焼戻し150~200℃空冷
・引張強さ930MPa以上
・伸び14%以上
・絞り40%以上
・シャルピー衝撃値59J/cm2以上
SCM420は、低合金鋼の一種で、高強度や高耐久性が求められる機械部品、自動車部品、航空機部品などに幅広く使用されています。SCM420の熱処理には、以下のような工程が含まれます。
・鋼材を加熱する(オーステナイト化):SCM420の鋼材を約800℃〜900℃に加熱し、オーステナイト(非常に硬くて柔軟な組織)にします。
・急冷する(焼入れ):急冷することによってオーステナイトをマルテンサイト(非常に硬くてもろい組織)に変換します。水や油などの冷却媒体を使用することができます。冷却速度が速ければ速いほど、硬度が高くなります。
・再加熱する(焼き戻し):焼き入れによって硬度が高くなりすぎてもろくなったマルテンサイト組織を、適切な温度で再加熱することで、より柔らかく、強度が向上します。
上記の工程によって、SCM420は、高強度、高耐久性、高靭性を備えた優れた材料になります。ただし、焼入れ後に過剰な加熱を行うと、組織が粗大化し、硬度や強度が低下する可能性があります。また、焼入れや焼き戻しの条件によっても、硬度や強度が変化するため、適切な熱処理工程を行うことが重要です。
SCM435の用途は以下のとおりです。
・軸類部品
・アーム類
・歯車
・ボルト
・機械構造部品全般
・自転車のフレーム
一方でSCM420は、以下の用途に使用されています。
・歯車
・軸類部品
・機械構造部品全般
オーステナイト組織は、900℃程度の高温状態で形成される組織です。比較的軟らかい性質を有し、磁石につかない特徴があります。フェライト組織は軟らかい組織であり、加工性に優れている組織です。そのため、オーステナイト組織やフェライト組織の割合が多い合金は、硬度が低い性質をもちます。
一方でパーライト組織は、フェライト組織とセメンタイトが層状になった組織です。セメンタイトとは鉄の炭化物(Fe3C)を指しており、比較的硬いことが特徴です。したがって、パーライト組織はほかの組織に比べて硬い性質を有しています。
パーライト組織に見られる層状組織は、熱処理に伴う冷却時に形成されます。冷却中、鉄に溶けていたCが、最も効率よく析出できる手段が層状析出です。1箇所にまとめて析出されるよりも、界面を作りながら層状に析出することでエネルギーを抑えられます。
これらの組織は熱処理によって決まり、異なる特性を発現することが特徴です。以下にJIS規格で定められている熱処理と、それぞれの特性を紹介します。
(SCM435)
・熱処理:焼入れ830~880℃油冷、焼戻し530~630℃急冷
・引張強さ930MPa以上
・伸び15%以上
・絞り50%以上
・シャルピー衝撃値78J/cm2以上
SCM435は、クロムモリブデン鋼として知られる合金鋼の一種で、高強度や高耐熱性が求められる部品や機械部品などに広く使用されています。SCM435の熱処理には、以下のような工程が含まれます。
・鋼材を加熱する(オーステナイト化):SCM435の鋼材を約800℃〜900℃に加熱し、オーステナイト(非常に硬くて柔軟な組織)にします。
・急冷する(焼入れ):急冷することによってオーステナイトをマルテンサイト(非常に硬くてもろい組織)に変換します。水や油などの冷却媒体を使用することができます。冷却速度が速ければ速いほど、硬度が高くなります。
・再加熱する(焼き戻し):焼き入れによって硬度が高くなりすぎてもろくなったマルテンサイト組織を、適切な温度で再加熱することで、より柔らかく、強度が向上します。
上記の工程によって、SCM435は、高強度、高耐熱性、高靭性を備えた優れた材料になります。ただし、焼入れ後に過剰な加熱を行うと、組織が粗大化し、硬度や強度が低下する可能性があります。また、焼入れや焼き戻しの条件によっても、硬度や強度が変化するため、適切な熱処理工程を行うことが重要です。
(SCM420)
・熱処理:焼入れ(一次)850~900℃油冷、(二次)800~850℃油冷、焼戻し150~200℃空冷
・引張強さ930MPa以上
・伸び14%以上
・絞り40%以上
・シャルピー衝撃値59J/cm2以上
SCM420は、低合金鋼の一種で、高強度や高耐久性が求められる機械部品、自動車部品、航空機部品などに幅広く使用されています。SCM420の熱処理には、以下のような工程が含まれます。
・鋼材を加熱する(オーステナイト化):SCM420の鋼材を約800℃〜900℃に加熱し、オーステナイト(非常に硬くて柔軟な組織)にします。
・急冷する(焼入れ):急冷することによってオーステナイトをマルテンサイト(非常に硬くてもろい組織)に変換します。水や油などの冷却媒体を使用することができます。冷却速度が速ければ速いほど、硬度が高くなります。
・再加熱する(焼き戻し):焼き入れによって硬度が高くなりすぎてもろくなったマルテンサイト組織を、適切な温度で再加熱することで、より柔らかく、強度が向上します。
上記の工程によって、SCM420は、高強度、高耐久性、高靭性を備えた優れた材料になります。ただし、焼入れ後に過剰な加熱を行うと、組織が粗大化し、硬度や強度が低下する可能性があります。また、焼入れや焼き戻しの条件によっても、硬度や強度が変化するため、適切な熱処理工程を行うことが重要です。
SCM435とSCM 420の用途
SCM435の用途は以下のとおりです。
・軸類部品
・アーム類
・歯車
・ボルト
・機械構造部品全般
・自転車のフレーム
一方でSCM420は、以下の用途に使用されています。
・歯車
・軸類部品
・機械構造部品全般