A7075は「超々ジュラルミン」と呼ばれ、強度に優れるアルミ合金です。本記事ではA7075の特徴や加工方法について、詳細に説明します。A7075について詳しく知り、アルミ合金の知識を深めたい方は参考にしてください。
A7075とは?
A7075はアルミニウム合金の中でも、もっとも強度に優れる合金です。A7075の成分は、主成分のAl(アルミニウム)に対してZn(亜鉛)とMg(マグネシウム)、Cu(銅)を添加している特徴があります。複数の添加元素が加えられている理由は、高強度を実現するためです。実際にA7075は、航空機やロケットなどの高い強度が求められる用途に使用されています。
A7075の開発背景
A7075は超々ジュラルミンと呼ばれていますが、この名称の由来には合金開発の歴史が関係しています。1906年Alに添加元素を加えることで、鋼のように硬さを向上させようと考えられたことから、実験でCuとMgが添加されました。その結果、時効硬化と呼ばれる現象が発見され「ジュラルミン」が開発されました。
ジュラルミンを使用する用途で、さらに高強度な材料が必要になったため、1928年にSi(ケイ素)を添加した「超ジュラルミン」が開発されます。
しかしアルミ合金の用途である戦闘機の性能向上のためには、超ジュラルミンよりも比重の小さいアルミ合金が必要でした。そのため添加元素が検討された結果、現在の「超々ジュラルミン」が発明されています。
ジュラルミンを使用する用途で、さらに高強度な材料が必要になったため、1928年にSi(ケイ素)を添加した「超ジュラルミン」が開発されます。
しかしアルミ合金の用途である戦闘機の性能向上のためには、超ジュラルミンよりも比重の小さいアルミ合金が必要でした。そのため添加元素が検討された結果、現在の「超々ジュラルミン」が発明されています。
A7075の成分
A7075にはZnとMg、Cuが添加されていると説明しましたが、このほかの元素としてCr(クロム)も添加されています。A7075は応力腐食割れが懸念される合金であり、応力腐食割れを抑制するCrが有効であるためです。応力腐食割れとは、腐食されやすい環境下で材料が負荷を受けると、割れが発生する現象のことです。
A7075の成分は、JIS規格(日本工業規格)で次のように定められています。
・Si(シリコン)0.40%以下
・Fe(鉄)0.50%以下
・Cu(銅)1.2~2.0%
・Mn(マンガン)0.30%以下
・Mg(マグネシウム)2.1~2.9%
・Cr(クロム)0.18~0.28%
・Zn(亜鉛)5.1~6.1%
・Ti(チタン)0.20%以下
・その他元素の個々0.05%以下
・その他元素の合計0.15%以下
A7075の成分は、JIS規格(日本工業規格)で次のように定められています。
・Si(シリコン)0.40%以下
・Fe(鉄)0.50%以下
・Cu(銅)1.2~2.0%
・Mn(マンガン)0.30%以下
・Mg(マグネシウム)2.1~2.9%
・Cr(クロム)0.18~0.28%
・Zn(亜鉛)5.1~6.1%
・Ti(チタン)0.20%以下
・その他元素の個々0.05%以下
・その他元素の合計0.15%以下
A7075の特徴
A7075は比重が2.8であり、鉄の約3分の1程度と軽い材料です。この軽量である特徴を活かして、航空機などの用途に使用されています。またアルミ合金の中でも強度が高く、引張強さは570N/mm2(引張強さの単位)です。代表的なアルミ合金A5052の引張強さは260N/mm2であるため、A7075の強度は非常に高いことがわかります。
様々な利点を有するA7075は、応力腐食割れや耐食性に劣るといった欠点があります。そのためA7075を使用する際は、使用環境に注意が必要です。
様々な利点を有するA7075は、応力腐食割れや耐食性に劣るといった欠点があります。そのためA7075を使用する際は、使用環境に注意が必要です。
A7075の加工方法
A7075を製品に使用する際、切削加工が主に用いられます。切削加工によって材料を切断したり削ったりすることで、複雑形状の製品に仕上げられる点が特徴的です。アルミ合金は加工性が良い材料であり、切削加工に向いているといえます。
しかしアルミ合金を加工する際は、2点注意が必要です。1つ目はアルミ合金を加工する場合、高速で切削する必要があることです。切削速度を高速にすればするほど、切削抵抗が小さくなるだけでなく、仕上がりの面粗さを小さく抑えられます。
2つ目の注意点は、溶着を防ぐことです。加工時に発生した熱によって溶けたアルミ合金が、切削工具に付着する現象のことを「溶着」といいます。溶着した切削工具で加工を続けると、加工精度が低下してしまいます。
溶着を防ぐためには、切削温度を抑制することが大切です。A7075の融点は約660℃と低いため、加工時の熱で容易に溶けてしまいます。切削温度を抑えるためには、クーラント(冷却液)の使用が効果的です。
ただしクーラントを使用すると、アルミ合金の表面状態が変わる可能性があります。クーラントの種類によって、アルミ合金と反応してしまうからです。クーラントの濃度が変わると加工面の仕上がり精度に影響するため、加工を検討している方は加工に詳しい企業に相談すると良いでしょう。
またA7075の溶接をする際は、溶接割れに注意が必要です。なぜならA7075はアルミ合金の中でも、とくに溶接性に劣るからです。溶接ではアルミ合金を液体の状態にし、固体状態に冷却するプロセスを繰り返します。A7075の溶接を行うと、液体から固体へ変化するときに収縮量が大きくなるため、クラックが発生し溶接割れにつながります。
しかしアルミ合金を加工する際は、2点注意が必要です。1つ目はアルミ合金を加工する場合、高速で切削する必要があることです。切削速度を高速にすればするほど、切削抵抗が小さくなるだけでなく、仕上がりの面粗さを小さく抑えられます。
2つ目の注意点は、溶着を防ぐことです。加工時に発生した熱によって溶けたアルミ合金が、切削工具に付着する現象のことを「溶着」といいます。溶着した切削工具で加工を続けると、加工精度が低下してしまいます。
溶着を防ぐためには、切削温度を抑制することが大切です。A7075の融点は約660℃と低いため、加工時の熱で容易に溶けてしまいます。切削温度を抑えるためには、クーラント(冷却液)の使用が効果的です。
ただしクーラントを使用すると、アルミ合金の表面状態が変わる可能性があります。クーラントの種類によって、アルミ合金と反応してしまうからです。クーラントの濃度が変わると加工面の仕上がり精度に影響するため、加工を検討している方は加工に詳しい企業に相談すると良いでしょう。
またA7075の溶接をする際は、溶接割れに注意が必要です。なぜならA7075はアルミ合金の中でも、とくに溶接性に劣るからです。溶接ではアルミ合金を液体の状態にし、固体状態に冷却するプロセスを繰り返します。A7075の溶接を行うと、液体から固体へ変化するときに収縮量が大きくなるため、クラックが発生し溶接割れにつながります。
A7075の組織
A7075は優れた強度を有する特徴がありますが、製品として使用するためには熱処理が欠かせません。一般的に、熱処理として「T6処理」を施します。T6処理とは、溶体化熱処理の後に、焼戻しを行う熱処理のことです。
溶体化熱処理は、Al母相に析出物を溶け込ませ、成分の偏りを低減させる熱処理です。その後で焼戻しを行うと、時効硬化によって高い硬度が得られます。時効硬化とは、時間が経過するにつれて析出物が形成され、材料の硬度が向上する現象のことです。
A7075にT6処理を行うと、硬さをはじめとして良好な機械的特性が得られます。具体的な機械的特性は、以下のとおりです。
・ブリネル硬さ150HB
・引張強さ570N/mm2
・耐力505 N/mm2
・板材の伸び11%
・棒材の伸び9%
A7075は応力腐食割れが生じやすい合金であるため、合金開発では様々な添加元素が検討されてきました。たとえば応力腐食割れを防ぐために、先述したようにCrが添加されています。このほかにも、たとえばZr(ジルコニウム)の添加は応力腐食割れに有効です。
A7075に含まれるFeやSiは、Alと反応して化合物を形成するため、靭性に影響を及ぼす懸念があります。靭性は、粘り強さをあらわす指標です。FeやSiがAlと反応して形成された化合物は、脆い性質を有するためアルミ合金の靭性が低下してしまいます。
靭性に優れるA7075を得るためには、アルミ合金の純度を上げることが大切です。したがって使用するアルミ合金の不純物量は、なるべく低く抑えるようにすると良いでしょう。A7075に対して高純度化を行った合金は、A7175やA7475が挙げられます。
また靭性は、アルミ合金を形成している結晶粒の大きさにも影響されます。結晶粒の大きさはMnやCr、Zrを添加することで抑制できるため、これらの元素は靭性向上に寄与する元素です。このようにA7075では強度や耐食性、靭性などの機械的特性を考慮して、成分が設計されています。
溶体化熱処理は、Al母相に析出物を溶け込ませ、成分の偏りを低減させる熱処理です。その後で焼戻しを行うと、時効硬化によって高い硬度が得られます。時効硬化とは、時間が経過するにつれて析出物が形成され、材料の硬度が向上する現象のことです。
A7075にT6処理を行うと、硬さをはじめとして良好な機械的特性が得られます。具体的な機械的特性は、以下のとおりです。
・ブリネル硬さ150HB
・引張強さ570N/mm2
・耐力505 N/mm2
・板材の伸び11%
・棒材の伸び9%
A7075は応力腐食割れが生じやすい合金であるため、合金開発では様々な添加元素が検討されてきました。たとえば応力腐食割れを防ぐために、先述したようにCrが添加されています。このほかにも、たとえばZr(ジルコニウム)の添加は応力腐食割れに有効です。
A7075に含まれるFeやSiは、Alと反応して化合物を形成するため、靭性に影響を及ぼす懸念があります。靭性は、粘り強さをあらわす指標です。FeやSiがAlと反応して形成された化合物は、脆い性質を有するためアルミ合金の靭性が低下してしまいます。
靭性に優れるA7075を得るためには、アルミ合金の純度を上げることが大切です。したがって使用するアルミ合金の不純物量は、なるべく低く抑えるようにすると良いでしょう。A7075に対して高純度化を行った合金は、A7175やA7475が挙げられます。
また靭性は、アルミ合金を形成している結晶粒の大きさにも影響されます。結晶粒の大きさはMnやCr、Zrを添加することで抑制できるため、これらの元素は靭性向上に寄与する元素です。このようにA7075では強度や耐食性、靭性などの機械的特性を考慮して、成分が設計されています。
A7075の用途
A7075は、長所である高強度と軽量の特徴を活かして、幅広い用途に使用されています。ただしA7075は、価格が比較的高いことが欠点です。そのため高い強度が要求される場面に絞って、次の用途に使用されます。
・航空機
・人工衛星
・ロケット
・自動車部品
・金属バットなどのスポーツ用品
・ロボット
・スキー板
・航空機
・人工衛星
・ロケット
・自動車部品
・金属バットなどのスポーツ用品
・ロボット
・スキー板