鉄の加工を町工場に依頼する際、どんなことに気を付けなければならないのでしょうか。鉄は非常にありふれた加工素材なので、どこの製造業者も積極的に依頼を引き受けていますし、見積もりも安く設定することができます。しかし、鉄加工を依頼する際の注意点を知らないまま、単に料金の一番安い業者に依頼してしまうと、トラブルの元となることも。
そこで、今回は鉄加工を依頼したい個人・企業向けに、業者に問い合わせる際の確認すべき点をご紹介します。
目次
鉄といっても種類はいろいろ。加工にも違いがある
鉄と一概に言っても、純鉄は珍しく、そのほとんどは鉄と別の金属素材を混ぜ合わせた合金となります。身近なところで言えば、炭素と鉄の鋼や、鉄とクロムのステンレスなど。いずれも主成分が鉄であることには変わりませんが、合金する素材の含有量によって、性質が大きく変わってきます。
例えば鋼と言えば非常に硬いイメージがありますが、その一方で炭素量が多くなると折れやすくなる、といった性質もあります。また、錆びや強度がどのくらい強い必要があるのか、曲げや接合は必要とするのかによっても種類を検討しなければなりません。上記のように、一概に鉄と言っても、基本的に鉄加工をする際の素材は、すべてが合金となり、目的に合わせて種類を決めるので、依頼主である企業と製造業は綿密な打ち合わせが必要となります。
鉄の加工の方法とは?
鉄の加工方法は一般的に「切削加工・溶接加工・金型加工」の3つに分けることができます。いずれも専門性が異なり、切削加工工場は一般的に金型の工作機を整備していないので、自社製品の鉄の加工方法に沿った製作所を見つけなければなりません。
また切削以外にも板金・製缶・溶接・表面処理など複数工程が必要となるのが普通ですが、企業によってはそれぞれ製作所を変えるところもあります。しかし、それは非効率ですしそれぞれの工場の進捗・品質・納期管理も大変ですので、一般的にはメインとなる切削工場に一気通貫ですべての工程を依頼するのが結果的に労務コストを下げることができます。
鉄の加工を業者に依頼する前の確認・チェック事項
製造業者にすべてを丸投げするのも一つの手ですが、最低限自社で確認しておきたい事項も幾つかあります。鉄加工を依頼する場合は、上述したように鉄加工の目的と使用する部品や製品によって、合金素材が大きく異なります。
・熱伝導率
熱伝導率が悪いと、鉄の内部で熱が逃げませんので、最悪膨張してしまいます。ボルトなど小さな部品は要注意。
・成型と切削どちらの加工が重要か
製品を作る際は金型による射出成型と切削を選びます。金型と言えば樹脂製品のイメージが強いですが、金属加工でも使用する機会は多いです。射出成型は一般的に低コストとされていますが、それは量産に限ったことで、最初の金型を作る費用が高いため小ロットの場合は切削の方が高品質・低予算が実現できます。また、高い精度を求める場合は切削加工を選ぶことになります。
・防錆処理
簡単に言えば錆び対策をするかしないか。錆び対策をする場合は納期が長くなります。また、表面処理は一般の製作所には工作機械が整備されておらず、提携している工場に委託して共同作業するのが普通であることも覚えておくといいでしょう。
・使用を想定している工作機械
NCフライスや旋盤加工機と比べて複合加工機は1台で複数の工程を行うことができ、またより高い精度を出すことができる一方、工作スピードが遅いため量産だと時間が掛かります。また、高度な工作機械を使用する場合は機械チャージが割高になるので、オーバースペックにならないように適切な工作機械を選ぶとともに、本当に必要な精度も今一度見直してみるのが予算を抑えるポイントです。
鉄加工かステンレス加工かは実は大きな違い
仮にステンレス加工を元から依頼するつもり、という企業があれば、今一度注意が必要です。ステンレスも鉄の一種ですが、一般的な鉄、つまり鋼(SS400)とは加工の難易度や仕入れ単価が異なります。そのため、鋼とステンレスを混同して相見積もりをとった場合、製造業者によって価格差が2倍も3倍も違う、なんてことも普通にあります。
近年は鉄材の価格高騰がとまらな!過去最高値を更新
近年は鉄の仕入れ価格も世界的に高騰しているのはご存知でしょうか。これは鉄を生成する際の鉄鉱石と木炭の市場価格が上がっていることが大きな理由にあります。
過去最高値は2008年で鉄材平均価格は11~13万/tでしたが、その後2020年までは5~7万/tの間で推移。しかし、2022年以降は再び12~13万/tとなっています。無論歴史的円安も価格高騰の背中を押している一因です。
業者を選ぶ際は鉄の仕入れに強いところを選ぶ
近年は鉄だけではなくステンレスやアルミなどあらゆる金属加工素材の仕入れ価格が上がっています。これまで日本の販売店や商社から鉄を調達していた製作所は、仕入れ価格の高騰についていけずに廃業するところも出てきました。
そのため、鉄の加工を依頼する場合は、「仕入れに強い」業者を選ぶように心がけたいところです。具体的には「鉄の生産国(中国等)に工場を持っている」、「商社を介さないで直接仕入れている(輸入している」などが挙げられますので、商談するときに質問してみてください。
フィリールは商社を介さない独自調達に成功しています
弊社フィリールは中国とベトナムに製作所を持ち、世界最大の生産国の中国から商社を介さず直接輸入しています。そのため、あらゆる金属価格の高騰が叫ばれている昨今においても努めて価格を抑えた提案をすることが可能です。
鉄加工の相見積もりをとるさいの注意点
鉄加工問わず、製造業者に金属加工を依頼する場合は、必ず複数社から相見積もりをとるようにしましょう。上述したように、同じ鉄素材でも、目的と用途、必要とする加工方法によって、料金は何倍も変わってきます。そのため、まずは親身になってくれる製造業者を探し、自社で用意した図面を共有して、どのような素材と鉄加工方法が最も適しているのかを打ち合わせしてください。
その上で相見積もりをとり、品質、サービス、価格、納期ともに妥当と思える業者に依頼するといいでしょう。