一昔前と比べると、日本の金属加工技術は飛躍しました。技術者の加工技術はもちろんですが、工作機械の発展も目を見張るものがあります。汎用旋盤から始まり、NC旋盤、マシニングセンタと発展し、昨今はNC旋盤とマシニングセンタを統合した「複合旋盤(=複合加工機)」と呼ばれる工作機械も普及をはじめています。
メーカーが単純に「これを図面通りに削ってくれたらいい」と要望を出したとしても、どの旋盤加工機を使うかによって、コストも納期も精度も変わります。
そこで、今回は複合旋盤で加工をするメリットやデメリットを踏まえつつ、金属加工業者への最適な提案・交渉方法をご紹介します。
目次
複合旋盤とは。最新金属加工機
近年の製造業界を盛り上げている「複合旋盤(=複合加工機)」は、簡単に言うとNC旋盤とマシニングセンタの機能を併せ持った最新の金属加工機となります。
10年ほどの型落ちであれば十分最新といえますし、同じく中古のNC旋盤と値段を比較すると、高いものだとゼロの桁が1つ変わります。
10年ほどの型落ちであれば十分最新といえますし、同じく中古のNC旋盤と値段を比較すると、高いものだとゼロの桁が1つ変わります。
しかし、複合旋盤で加工ができる工場は、提案できる幅も広がりますし、難易度の高い切削も可能となります。
2種類の複合旋盤。加工スタイルに合わせて選択
複合旋盤加工機には、「ターニングセンタ」と「マシニングセンタ」と2種類に分けることができます。ターニングセンタベースはNC旋盤加工機を主軸としたマシニングセンタの複合旋盤で、マシニングセンタベースはマシニングセンタを主軸にNC旋盤を搭載した複合旋盤加工機となります。
どちらの複合旋盤を選択すべきかは、対象物がNC旋盤かマシニングセンタのどちらの加工技術をより必要としているかで決まりますので、工場側とよく相談するのがいいでしょう。
メーカーが複合旋盤の持つ加工工場を選ぶメリット
では、メーカーが複合旋盤を所有している加工工場をあえて選ぶメリットは、どこにあるのでしょうか。
まず、複合旋盤の特徴は「1つの加工機で複数の切削加工を行うことができる」点にあります。
複合旋盤は単純に高精度の加工が可能
通常、NC旋盤やマシニングセンタ、フライスといった工作機械を切削のために変える工程を踏む場合、精度が低下してしまう可能性があります。
これは工具や治具を人の手で交換したり、旋盤加工機を交換する度に精度の低下は逐一懸念されます。
一方で複合旋盤加工機は、1台で複数の加工をすることができるため、人の手が加わりません。
それだけ、最初のプログラミングで精度の高い加工を実現することができます。
それだけ、最初のプログラミングで精度の高い加工を実現することができます。
メーカー(依頼者)の希望の納期に合わせることができる
メーカー(依頼者)は予算と納期のバランスを調整して加工工場に依頼することかと思いますが、中小の工場に依頼する際は納期が遅延しがちです。
これは限られた工作機械と人員で複数案件を回さなければならないからです。
これは限られた工作機械と人員で複数案件を回さなければならないからです。
複合旋盤加工機をNC加工機と併せて持っている工場は、従来よりも加工スピードの高速化を図ることができます。
複合旋盤自体の加工スピードはNC旋盤と比べると遅いですが、複数案件で併用することによってメーカーの希望の納期に合わせることが極力可能となります。
複合旋盤自体の加工スピードはNC旋盤と比べると遅いですが、複数案件で併用することによってメーカーの希望の納期に合わせることが極力可能となります。
複合旋盤のデメリットもある
まず第一に、複合旋盤加工機は非常に高価な工作機械となるため、所有している工場自体がそれほど多くはありません。
また、上述したように複数の工程を一手に引き受けてくれるために、高精度の切削が可能な他、人件費もかかりません。
しかし、日本の加工技術は年々向上していますし、「NC旋盤でも同じ精度を出すことができる」という工場もあるでしょう。
また、高価な工作機械を使うということは、それだけコストも上がります。「予算をとるか、納期をとるか」の選択に迫られることもあるでしょう。
また、高価な工作機械を使うということは、それだけコストも上がります。「予算をとるか、納期をとるか」の選択に迫られることもあるでしょう。
複合旋盤の加工機の利用の有無
複合旋盤を使った加工を依頼するかどうかは、「複合旋盤の加工機1台でほとんどの切削を終えることができるかどうか」で決めるといいかもしれません。
複合旋盤を用いても、複数の旋盤加工機を使わなければならないようであれば、複合旋盤を使う意味はそれほどないかもしれません。
予算と納期のバランスが重要。複合旋盤よりも工場の提案が大切
上述したように、複合旋盤はNC旋盤とマシニングセンタのスペックを併せ持った加工機となります。
非常に高度な切削が可能の工作機ですが、コスト高となるほか、工場によってはNCでも同程度の加工精度を実現できることができるところもあります。
非常に高度な切削が可能の工作機ですが、コスト高となるほか、工場によってはNCでも同程度の加工精度を実現できることができるところもあります。
大切なのは予算と納期のバランスとなるほか、複合旋盤でなければ出せない高い精度が、本当に必要なのかどうかも見直してみるといいでしょう。