真鍮の腐食性と材質特性を徹底解説|耐食性・機械的性質・用途のポイント
真鍮は、銅と亜鉛を主成分とする合金で、古くから建材・装飾品・機械部品などに幅広く利用されてきました。
一方で「腐食性」や「材質特性」について正しく理解しておかないと、適切な用途や加工方法を判断できません。
本記事では、真鍮の腐食に関わる性質、機械的特性、加工上の注意点などを詳しく解説します。
目次
真鍮とは?基本的な材質特性
真鍮(Brass)は、銅(Cu)に亜鉛(Zn)を加えた合金です。亜鉛の含有量によって色味や機械的性質が変化する点が特徴です。一般的には亜鉛が30〜40%含まれる合金が多く、装飾性と加工性を兼ね備えています。
真鍮の組成と種類
真鍮は亜鉛含有量の違いによって以下のように分類されます。
種類 | 亜鉛含有量 | 特徴 |
---|---|---|
α真鍮 | 35%以下 | 加工性に優れ、冷間加工が可能 |
α+β真鍮 | 35〜45% | 強度が高いが加工性はやや劣る |
物理的特性
- 比重:8.4〜8.7
- 融点:約900℃前後
- 導電率:銅の約30%
- 熱伝導率:銅より低いが鉄より高い
真鍮の腐食性と耐食性
真鍮は一見すると耐食性に優れているように思われがちですが、特定の環境では腐食が進行しやすい特徴があります。特に塩分やアンモニアが存在する環境では、応力腐食割れや脱亜鉛腐食が発生するリスクが高まります。
脱亜鉛腐食とは?
脱亜鉛腐食とは、真鍮から亜鉛だけが優先的に溶け出し、銅の多いスポンジ状の構造が残る現象です。この結果、材質の強度が著しく低下します。水道管やバルブ部品などで発生しやすいため、合金成分を工夫した「脱亜鉛耐性真鍮(dezincification resistant brass)」が開発されています。
応力腐食割れ
応力腐食割れは、引張応力と腐食環境が同時に作用することで、真鍮が突然破断する現象です。特にアンモニアを含む環境では注意が必要です。この問題を回避するためには、残留応力を低減する焼鈍処理や環境対策が求められます。
真鍮の機械的特性と加工性
真鍮は切削加工性に優れており、旋盤加工やフライス加工などに適しています。また、冷間鍛造やプレス加工も可能で、装飾品から精密部品まで幅広く利用されています。
切削加工性
真鍮は快削性を持ち、工具摩耗が少ないため自動旋盤による大量生産に適しています。特に鉛を微量添加した快削真鍮(C3604など)は加工効率が高く、電子部品や精密機器のコネクタに使用されます。
→ 加工例はこちら:旋盤・切削加工サービス
強度と硬度
真鍮の引張強度は300〜600N/mm²程度で、加工や熱処理により幅広く調整可能です。焼鈍状態では柔らかく、冷間加工を進めると強度が増すため、設計用途に応じた選択が可能です。
真鍮の用途と選定ポイント
真鍮はその美しい金色の外観と加工性の良さから、装飾品・建築金物・機械部品・水回り製品など多岐にわたり使用されています。
- 装飾:楽器、アクセサリー、建材(ドアノブ、手すり)
- 機械部品:ギア、ベアリング、バルブ部品
- 電気部品:端子、コネクタ
- 水回り:蛇口、継手
材質選定の注意点
腐食環境で使用する場合は、脱亜鉛耐性真鍮を選択することが望ましいです。また、強度が必要な場合はα+β真鍮を、加工性を優先する場合はα真鍮を選びます。
よくある質問(FAQ)
- 真鍮は錆びますか?
- 真鍮は鉄のように赤錆を生じることはありませんが、酸化により表面がくすんだり、緑青(ろくしょう)と呼ばれる青緑色の錆が発生します。これは銅成分が酸化・炭酸化することで生じる自然現象であり、装飾用途ではあえて風合いとして利用される場合もあります。
- 真鍮の腐食を防ぐ方法は?
- 防食コーティングやニッケルメッキなどの表面処理が有効です。また、腐食環境での使用を避ける、定期的な清掃を行うといったメンテナンスも腐食を抑制します。脱亜鉛腐食が懸念される場合は耐性合金の使用が推奨されます。
- 真鍮と青銅の違いは?
- 真鍮は銅+亜鉛合金、青銅は銅+錫合金が基本です。真鍮は加工性と装飾性に優れ、青銅は耐摩耗性や耐食性に優れています。用途に応じて選択するのが一般的です。詳しくは素材選定ガイドをご覧ください。
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