SUS420 J1とSUS420J2は、マルテンサイト系に分類されるステンレス鋼です。マルテンサイト系ステンレス鋼は高い硬度・強度を有するため、タービンブレードやノズルなどの機械構造用部品に使用されます。本記事では、SUS420 J1とSUS420J2の違いや加工方法、用途についてご紹介します。マルテンサイト系ステンレス鋼の特徴を知り、加工を検討している方は最後までご覧ください。
SUS420 J1、SUS420J2とは?
SUS420 J1とSUS420J2は、マルテンサイト系ステンレス鋼です。Cr(クロム)を10.5%以上含有するステンレス鋼は、次の単語の頭文字から「SUS」と名称がついています。
・Steel(鉄)
・Use(使用)
・Stainless(錆びにくい)
これらの語源から、ステンレス鋼は「錆びにくい鉄合金」として知られています。
SUS420 J1とSUS420J2の違いは、材料に含まれるC(炭素)量です。SUS420J1の最大C量は0.25%であるのに対して、SUS420J2では最大0.40%のCが含まれています。これらの合金はマルテンサイト系ステンレス鋼に分類されており、高い強度や硬度を有する特徴があります。
・Steel(鉄)
・Use(使用)
・Stainless(錆びにくい)
これらの語源から、ステンレス鋼は「錆びにくい鉄合金」として知られています。
SUS420 J1とSUS420J2の違いは、材料に含まれるC(炭素)量です。SUS420J1の最大C量は0.25%であるのに対して、SUS420J2では最大0.40%のCが含まれています。これらの合金はマルテンサイト系ステンレス鋼に分類されており、高い強度や硬度を有する特徴があります。
マルテンサイト系ステンレス鋼の特徴
マルテンサイト系ステンレス鋼は、強度や耐食性、被加工性に優れる特徴を有しており、比較的コストが低い合金です。C量が多く含まれていることが特徴的で、焼入れによる熱処理によって高い硬度を実現しています。
焼入れとは高温状態から急冷する熱処理で、室温状態でもマルテンサイト組織を維持するための処理方法です。マルテンサイト組織を発現させたい理由は、高硬度かつ耐摩耗性を向上させるためです。マルテンサイト組織の特徴が発揮されることにより、マルテンサイト系ステンレス鋼の硬度は高くなります。
マルテンサイト系ステンレス鋼は、下記のように多くの合金に分類できます。
・SUS403
・SUS410S
・SUS410F2
・SUS420J1
・SUS420J2
・SUS420F
・SUS431
・SUS440B
・SUS440C
・SUS440F
このように多くの種類が存在する理由は、各用途に応じて成分設計が異なるからです。たとえばSUS403やSUS410Sは、マルテンサイト系ステンレス鋼の中でも耐食性や加工性に優れています。SUS410F2は被削性に優れ、SUS431は優れた耐食性と靭性を兼ね備えています。
マルテンサイト系ステンレス鋼の中でも、高い硬度と耐摩耗性を追求した合金が、SUS420J1
やSUS420J2です。これらの合金はC量が多く、焼入硬化を利用することで高い硬度を有しています。焼入硬化とは、焼入れによる熱処理時にマルテンサイト組織を発現させ、高い硬度が得られる現象のことです。
SUS420J1とSUS420J2の違いはC量であり、SUS420J1のC量は最大0.25%まで含むのに対して、SUS420J2では最大0.40%まで含有できます。したがってCを多く含むSUS420J2は、SUS420J1よりも高い硬度を有することが特徴です。
焼入れとは高温状態から急冷する熱処理で、室温状態でもマルテンサイト組織を維持するための処理方法です。マルテンサイト組織を発現させたい理由は、高硬度かつ耐摩耗性を向上させるためです。マルテンサイト組織の特徴が発揮されることにより、マルテンサイト系ステンレス鋼の硬度は高くなります。
マルテンサイト系ステンレス鋼は、下記のように多くの合金に分類できます。
・SUS403
・SUS410S
・SUS410F2
・SUS420J1
・SUS420J2
・SUS420F
・SUS431
・SUS440B
・SUS440C
・SUS440F
このように多くの種類が存在する理由は、各用途に応じて成分設計が異なるからです。たとえばSUS403やSUS410Sは、マルテンサイト系ステンレス鋼の中でも耐食性や加工性に優れています。SUS410F2は被削性に優れ、SUS431は優れた耐食性と靭性を兼ね備えています。
マルテンサイト系ステンレス鋼の中でも、高い硬度と耐摩耗性を追求した合金が、SUS420J1
やSUS420J2です。これらの合金はC量が多く、焼入硬化を利用することで高い硬度を有しています。焼入硬化とは、焼入れによる熱処理時にマルテンサイト組織を発現させ、高い硬度が得られる現象のことです。
SUS420J1とSUS420J2の違いはC量であり、SUS420J1のC量は最大0.25%まで含むのに対して、SUS420J2では最大0.40%まで含有できます。したがってCを多く含むSUS420J2は、SUS420J1よりも高い硬度を有することが特徴です。
SUS420J1とは?
SUS420J1は、マルテンサイト系ステンレス鋼の代表合金であるSUS410に対して、耐摩耗性を向上するために開発された合金です。SUS410は0.1%程度のC量が含まれていますが、SUS420J1はさらに多くのCが含まれています。
JIS規格(日本工業規格)で定められているSUS420J1の成分は、下記のとおりです。
・C(炭素)0.16~0.25%
・Si(シリコン)1.00%以下
・Mn(マンガン)1.00%以下
・P(リン)0.040%以下
・S(硫黄)0.030%以上
・Cr(クロム)12.00~14.00%
JIS規格(日本工業規格)で定められているSUS420J1の成分は、下記のとおりです。
・C(炭素)0.16~0.25%
・Si(シリコン)1.00%以下
・Mn(マンガン)1.00%以下
・P(リン)0.040%以下
・S(硫黄)0.030%以上
・Cr(クロム)12.00~14.00%
SUS420J2とは?
SUS420J2は、SUS420J1に対してC量が多く含まれています。なぜなら、SUS420J1よりも硬度を向上させるためです。実際にJIS規格では、SUS420J1の硬度が223HBW(ブリネル硬さ)であるのに対して、SUS420J2は235HBWまで達することが明記されています。
SUS420J2の成分は、JIS規格で下記のように定められています。
・C(炭素)0.26~0.40%
・Si(シリコン)1.00%以下
・Mn(マンガン)1.00%以下
・P(リン)0.040%以下
・S(硫黄)0.030%以上
・Cr(クロム)12.00~14.00%
SUS420J1とSUS420J2の成分の違いはC量のみですが、わずかな成分の差が硬度などの特性に大きく影響を及ぼす点は注目すべきポイントです。
SUS420J2の成分は、JIS規格で下記のように定められています。
・C(炭素)0.26~0.40%
・Si(シリコン)1.00%以下
・Mn(マンガン)1.00%以下
・P(リン)0.040%以下
・S(硫黄)0.030%以上
・Cr(クロム)12.00~14.00%
SUS420J1とSUS420J2の成分の違いはC量のみですが、わずかな成分の差が硬度などの特性に大きく影響を及ぼす点は注目すべきポイントです。
SUS420 J1とSUS420J2の加工方法
SUS420 J1とSUS420J2などのマルテンサイト系ステンレス鋼を加工する際は、切削加工や曲げ加工、溶接などの方法があります。マルテンサイト系ステンレス鋼は加工前に、熱処理が必要になります。この理由は、マルテンサイト系ステンレス鋼は硬いので、熱処理により硬度を低くして加工性を向上するためです。
加工前に施す熱処理は、焼なましと呼ばれる処理を行います。焼なましとは、合金の硬度を下げる目的で使われることが多く、別名「焼鈍」とも呼ばれる熱処理です。焼なましを行うことで材料を軟らかくするだけでなく、下記の効果も期待できます。
・成分の偏り(偏析)を低減する
・組織を均一にする
・合金中に蓄積した「残留応力」を除去する
マルテンサイト系ステンレス鋼に施す焼なましは、800~900℃による徐冷です。徐冷は急冷とは異なり、ゆっくりと冷却する冷却方法です。
マルテンサイト系ステンレス鋼に限らず、ステンレス鋼は加工が難しいことで知られています。この理由は「加工硬化」を生じることや、熱伝導率が低いことが挙げられます。加工硬化とは加工時の負荷を受けて、材料が硬くなる現象のことです。硬度が高い材料を加工することは難しく、加工を行う際は材料や加工に関するノウハウが必要になるでしょう。
ステンレス鋼は熱伝導率が低いため、切削工具が損傷を受ける可能性があります。なぜなら加工で発生した熱が逃げにくく、切削工具に溜まりダメージを与えてしまうからです。ステンレス鋼の加工の際は、材料の知識やノウハウが豊富な企業に依頼することをオススメします。
加工前に施す熱処理は、焼なましと呼ばれる処理を行います。焼なましとは、合金の硬度を下げる目的で使われることが多く、別名「焼鈍」とも呼ばれる熱処理です。焼なましを行うことで材料を軟らかくするだけでなく、下記の効果も期待できます。
・成分の偏り(偏析)を低減する
・組織を均一にする
・合金中に蓄積した「残留応力」を除去する
マルテンサイト系ステンレス鋼に施す焼なましは、800~900℃による徐冷です。徐冷は急冷とは異なり、ゆっくりと冷却する冷却方法です。
マルテンサイト系ステンレス鋼に限らず、ステンレス鋼は加工が難しいことで知られています。この理由は「加工硬化」を生じることや、熱伝導率が低いことが挙げられます。加工硬化とは加工時の負荷を受けて、材料が硬くなる現象のことです。硬度が高い材料を加工することは難しく、加工を行う際は材料や加工に関するノウハウが必要になるでしょう。
ステンレス鋼は熱伝導率が低いため、切削工具が損傷を受ける可能性があります。なぜなら加工で発生した熱が逃げにくく、切削工具に溜まりダメージを与えてしまうからです。ステンレス鋼の加工の際は、材料の知識やノウハウが豊富な企業に依頼することをオススメします。
SUS420 J1とSUS420J2の組織
SUS420J1とSUS420J2はC量が異なる点を除くと、他の成分は同じであり似たような特徴を有しています。今回はSUS420J2を例にして、組織について具体的に説明します。SUS420J2は製品として使用する場合、下記の熱処理が必要です。
・焼なまし(約750℃急冷または800~900℃徐冷)
・焼入れ(980~1040℃急冷)
・焼戻し(150~400空冷)
・焼なまし(約750℃急冷または800~900℃徐冷)
・焼入れ(980~1040℃急冷)
・焼戻し(150~400空冷)
熱処理
焼なましや焼入れを施した後、焼戻しによる熱処理を行います。焼戻しとは低温で熱処理を行うことによって、焼入れ後に材料が脆くなるといった欠点を改善するための処理のことです。焼戻しを行うと材料に粘りが生まれるため、製品での使用時に割れを防げるメリットがあります。
しかしマルテンサイト系ステンレス鋼の焼戻しを行う際は、熱処理温度に注意しましょう。475℃付近に昇温されたマルテンサイト系ステンレス鋼は、脆くなる性質があるためです。この現象は「475℃脆化」として知られています。
475℃脆化が生じる理由は、475℃付近の温度でCr量の多い固溶体(金属中で混ざり合い、溶け合った状態の組織)と、Cr量の低い固溶体に分解されるからです。Cr量の多い固溶体が析出すると、材料が硬化して脆くなってしまいます。
しかしマルテンサイト系ステンレス鋼の焼戻しを行う際は、熱処理温度に注意しましょう。475℃付近に昇温されたマルテンサイト系ステンレス鋼は、脆くなる性質があるためです。この現象は「475℃脆化」として知られています。
475℃脆化が生じる理由は、475℃付近の温度でCr量の多い固溶体(金属中で混ざり合い、溶け合った状態の組織)と、Cr量の低い固溶体に分解されるからです。Cr量の多い固溶体が析出すると、材料が硬化して脆くなってしまいます。
組織
焼入れ直後のSUS420J2に見られる組織は、マルテンサイト組織と微細な球状炭化物です。焼入れ温度を調整することで、球状炭化物の析出量が変化します。たとえば焼入れ温度が高い場合、球状炭化物の量が減少するにつれて、マルテンサイト組織中のC量が増加する傾向が見られます。
したがって焼入れ硬さを向上するためには、焼入れ温度の上昇が効果的です。しかし焼入れ温度1040℃以上に上昇すると、硬度が低下する懸念があります。なぜなら焼入れ温度が高い場合、マルテンサイト組織が十分に得られないからです。
マルテンサイト組織が形成されないステンレス鋼は、比較的軟らかい「残留オーステナイト組織」が形成されます。残留オーステナイト組織の形成を避けるために、適切な温度で焼入れを行うことが重要です。
したがって焼入れ硬さを向上するためには、焼入れ温度の上昇が効果的です。しかし焼入れ温度1040℃以上に上昇すると、硬度が低下する懸念があります。なぜなら焼入れ温度が高い場合、マルテンサイト組織が十分に得られないからです。
マルテンサイト組織が形成されないステンレス鋼は、比較的軟らかい「残留オーステナイト組織」が形成されます。残留オーステナイト組織の形成を避けるために、適切な温度で焼入れを行うことが重要です。
SUS420熱処理工程
SUS420J2は、日本工業規格(JIS)で定義されたマルテンサイト系ステンレス鋼です。熱処理によって硬度と耐蝕性が向上します。
一般的に、SUS420J2の熱処理には、以下のような工程が含まれます。
鋼材を加熱する(オーステナイト化):SUS420J2の鋼材を約980℃〜1050℃に加熱し、オーステナイト(非常に硬くて柔軟な組織)にします。
急冷する(焼入れ):急冷することによってオーステナイトをマルテンサイト(非常に硬くてもろい組織)に変換します。水や油などの冷却媒体を使用することができます。冷却速度が速ければ速いほど、硬度が高くなります。
再加熱する(焼き戻し):焼き入れによって硬度が高くなりすぎてもろくなったマルテンサイト組織を、適切な温度で再加熱することで、より柔らかく、耐蝕性が向上します。
上記の工程によって、SUS420J2は、高い耐摩耗性、耐蝕性、硬度、耐久性を備えた優れた材料になります。ただし、焼入れ後に過剰な加熱を行うと、組織が粗大化し、硬度や耐蝕性が低下する可能性があります。そのため、適切な熱処理工程を行うことが重要です。
一般的に、SUS420J2の熱処理には、以下のような工程が含まれます。
鋼材を加熱する(オーステナイト化):SUS420J2の鋼材を約980℃〜1050℃に加熱し、オーステナイト(非常に硬くて柔軟な組織)にします。
急冷する(焼入れ):急冷することによってオーステナイトをマルテンサイト(非常に硬くてもろい組織)に変換します。水や油などの冷却媒体を使用することができます。冷却速度が速ければ速いほど、硬度が高くなります。
再加熱する(焼き戻し):焼き入れによって硬度が高くなりすぎてもろくなったマルテンサイト組織を、適切な温度で再加熱することで、より柔らかく、耐蝕性が向上します。
上記の工程によって、SUS420J2は、高い耐摩耗性、耐蝕性、硬度、耐久性を備えた優れた材料になります。ただし、焼入れ後に過剰な加熱を行うと、組織が粗大化し、硬度や耐蝕性が低下する可能性があります。そのため、適切な熱処理工程を行うことが重要です。
SUS420 J1とSUS420J2の用途
SUS420 J1とSUS420J2は、マルテンサイト系ステンレス鋼の特徴を活かして、高い強度や耐摩耗性が求められる用途に使用されます。具体的な用途は、下記のとおりです。
・シャフト
・ボルト
・刃物
・ノズル
・医療機器
・プラスチック用金型
・スプリング
・シャフト
・ボルト
・刃物
・ノズル
・医療機器
・プラスチック用金型
・スプリング