SUS316は、身近に使われているステンレス鋼SUS304よりも耐食性に優れた合金です。このSUS316に比べて、C(炭素)量を少なくしたステンレス鋼がSUS316Lです。SUS316とSUS316Lについて、ステンレス鋼の違いや加工方法、組織や用途をご紹介します。「ステンレス鋼の知識を深めて加工に活かしたい」と検討している方は、ぜひ参考にしてください。
SUS316、SUS316Lとは?
SUS316とSUS316Lは、オーステナイト系ステンレス鋼に分類される合金です。はじめにステンレス鋼とは、添加元素Cr(クロム)を10.5%以上含む合金を指し、頭に「SUS」の冠名がつきます。Steel(鉄)、Use(使用)、Stainless(錆びにくい)の頭文字を略した「錆びにくい鉄」の意味があります。
ステンレス鋼は、大きく分けると下記の5種類です。
・オーステナイト系
・マルテンサイト系
・フェライト系
・オーステナイト・フェライト系(二相系)
・析出硬化系
オーステナイト系ステンレス鋼は、上記ステンレス鋼のうち約60%以上の生産量を占めているため、需要が高いステンレス鋼であるといえます。またオーステナイト系ステンレス鋼は、延性や靭性が良好であるだけでなく、溶接性や耐食性にも優れることが特徴的です。そのため、家庭用品や化学工業への用途に広く使用されています。
マルテンサイト系ステンレス鋼は、硬い性質を有するマルテンサイト組織によって、高硬度を特徴とする合金です。このほか軟らかい特性を有する「フェライト系ステンレス鋼」や、オーステナイト組織とフェライト組織が混在した「二相系ステンレス鋼」、化合物の析出により高い硬度を示す「析出硬化系ステンレス鋼」が挙げられます。
ステンレス鋼は、大きく分けると下記の5種類です。
・オーステナイト系
・マルテンサイト系
・フェライト系
・オーステナイト・フェライト系(二相系)
・析出硬化系
オーステナイト系ステンレス鋼は、上記ステンレス鋼のうち約60%以上の生産量を占めているため、需要が高いステンレス鋼であるといえます。またオーステナイト系ステンレス鋼は、延性や靭性が良好であるだけでなく、溶接性や耐食性にも優れることが特徴的です。そのため、家庭用品や化学工業への用途に広く使用されています。
マルテンサイト系ステンレス鋼は、硬い性質を有するマルテンサイト組織によって、高硬度を特徴とする合金です。このほか軟らかい特性を有する「フェライト系ステンレス鋼」や、オーステナイト組織とフェライト組織が混在した「二相系ステンレス鋼」、化合物の析出により高い硬度を示す「析出硬化系ステンレス鋼」が挙げられます。
SUS316とは?
SUS316は、オーステナイト系ステンレス鋼の中でも耐食性に優れる合金です。一般的にSUS316に限らず、オーステナイト系ステンレス鋼は耐食性に優れる特徴があります。なぜならステンレス鋼に含まれているCr(クロム)が、表面に酸化皮膜を形成するためです。
たとえばステンレス鋼が海水にさらされる環境では、錆びやすくなります。しかし酸化皮膜でステンレス鋼を保護することで、ステンレス鋼内部と海水との接触を防げます。Crが十分に含まれていると酸化皮膜を形成できるため、ステンレス鋼に含有されるCr量は10.5%以上であることが一般的です。
またオーステナイト系ステンレス鋼が耐食性に優れる理由は、Ni(ニッケル)が含まれるからです。Niは、Crが形成した酸化皮膜の働きを強化する役割を果たしています。
しかし海水や塩害地域などの環境で使用する場合、ステンレス鋼が錆びたり腐食したりすることが懸念点です。たとえばステンレス鋼SUS304が使われている自転車を、海辺に置いておくとすぐに錆びてしまいます。このように身近な製品に使用されるSUS304では、耐食性が不十分になり得るケースがあります。
そこで耐食性を向上させるために、Mo(モリブデン)を添加した合金がSUS316です。Moを添加するとNiと同様に、酸化皮膜の働きを強化する効果があります。したがってMoを含まないステンレス鋼に比べて、耐食性に優れる特徴があります。
JIS規格(日本工業規格)で定められているSUS316の成分は、下記のとおりです。
・C(炭素)0.08%以下
・Si(シリコン)1.00%以下
・Mn(マンガン)2.00%以下
・P(リン)0.045%以下
・S(硫黄)0.030%以上
・Ni(ニッケル)10.00~14.00%
・Cr(クロム)16.00~18.00%
・Mo(モリブデン)2.00~3.00%
たとえばステンレス鋼が海水にさらされる環境では、錆びやすくなります。しかし酸化皮膜でステンレス鋼を保護することで、ステンレス鋼内部と海水との接触を防げます。Crが十分に含まれていると酸化皮膜を形成できるため、ステンレス鋼に含有されるCr量は10.5%以上であることが一般的です。
またオーステナイト系ステンレス鋼が耐食性に優れる理由は、Ni(ニッケル)が含まれるからです。Niは、Crが形成した酸化皮膜の働きを強化する役割を果たしています。
しかし海水や塩害地域などの環境で使用する場合、ステンレス鋼が錆びたり腐食したりすることが懸念点です。たとえばステンレス鋼SUS304が使われている自転車を、海辺に置いておくとすぐに錆びてしまいます。このように身近な製品に使用されるSUS304では、耐食性が不十分になり得るケースがあります。
そこで耐食性を向上させるために、Mo(モリブデン)を添加した合金がSUS316です。Moを添加するとNiと同様に、酸化皮膜の働きを強化する効果があります。したがってMoを含まないステンレス鋼に比べて、耐食性に優れる特徴があります。
JIS規格(日本工業規格)で定められているSUS316の成分は、下記のとおりです。
・C(炭素)0.08%以下
・Si(シリコン)1.00%以下
・Mn(マンガン)2.00%以下
・P(リン)0.045%以下
・S(硫黄)0.030%以上
・Ni(ニッケル)10.00~14.00%
・Cr(クロム)16.00~18.00%
・Mo(モリブデン)2.00~3.00%
SUS316Lとは?
SUS316Lは、SUS316に含まれるC量を低減させることで、耐食性と加工性の向上を両立したステンレス鋼です。SUS316Lの「L」は、Low(低い)の頭文字であり、C量が低いことを表しています。
またSUS316Lは、別名で「サージカルステンレス」とも呼ばれています。金属アレルギーを起こしにくい材料であり、主な用途はネックレスなどのアクセサリーや医療用工具です。
SUS316Lは、材料同士をつなぎ合わせる溶接を行う際も、高い耐食性を発揮します。SUS316よりもC量が少なくなることで、溶接部分の腐食を防げるようになるからです。SUS316よりも高い耐食性が求められる用途に、SUS316Lを使用することが多いといえます。
JIS規格によると、SUS316Lの成分は次のとおりです。
・C(炭素)0.003%以下
・Si(シリコン)1.00%以下
・Mn(マンガン)2.00%以下
・P(リン)0.045%以下
・S(硫黄)0.030%以上
・Ni(ニッケル)12.00~15.00%
・Cr(クロム)16.00~18.00%
・Mo(モリブデン)2.00~3.00%
またSUS316Lは、別名で「サージカルステンレス」とも呼ばれています。金属アレルギーを起こしにくい材料であり、主な用途はネックレスなどのアクセサリーや医療用工具です。
SUS316Lは、材料同士をつなぎ合わせる溶接を行う際も、高い耐食性を発揮します。SUS316よりもC量が少なくなることで、溶接部分の腐食を防げるようになるからです。SUS316よりも高い耐食性が求められる用途に、SUS316Lを使用することが多いといえます。
JIS規格によると、SUS316Lの成分は次のとおりです。
・C(炭素)0.003%以下
・Si(シリコン)1.00%以下
・Mn(マンガン)2.00%以下
・P(リン)0.045%以下
・S(硫黄)0.030%以上
・Ni(ニッケル)12.00~15.00%
・Cr(クロム)16.00~18.00%
・Mo(モリブデン)2.00~3.00%
SUS316とSUS316Lの違い
SUS316とSUS316Lの違いは、含有するC量が異なることです。SUS316のC含有量は0.08%以下であるのに対して、SUS316Lでは0.003%以下と少なくなっています。耐食性と加工性を向上させるために、SUS316LではC量を低減しています。SUS316とSUS316Lの耐食性と加工性について、それぞれ確認していきましょう。
耐食性の違い
SUS316はMoが含まれているため、比較的高い耐食性を有しています。Cを低減したSUS316Lは、さらに優れた耐食性を示すステンレス鋼です。Cの低減が耐食性を向上させる理由は、Cr系炭化物の析出を防げるからです。
SUS316にはCとCrが含まれており、これらの成分が反応するとCr系炭化物が形成されます。Cr系炭化物は、主に熱処理や溶接を行う際に形成される化合物です。SUS316などのオーステナイト系ステンレス鋼は、600~900℃の温度域に加熱されると、Cr系炭化物が結晶粒界に析出する特徴があります。
金属材料は、原子が規則正しく配列した「結晶構造」が1つに集まることで、「結晶粒」が構成されています。結晶粒界とは、結晶粒と結晶粒の境界のことです。オーステナイト系ステンレス鋼を600~900℃の加熱した場合、結晶粒界にCr系炭化物が形成されるため、結晶粒のまわりに炭化物が配列します。
このように結晶粒界にCr系炭化物が析出すると、炭化物の近くの領域でCr濃度が低下します。なぜなら結晶粒界に析出したCr系炭化物の形成のために、Crを奪われるからです。Cr濃度が低下した領域では、Crが少ないため耐食性が低下します。
したがって、Cr量が少ない領域が結晶粒界に形成されますから、この領域は腐食されやすい状態です。溶接を行う場合、Cr量が少ない結晶粒界が優先的に腐食されるため、「粒界腐食」が発生しやすくなります。
粒界腐食を抑制するための方法の一つが、C量を低減することです。C量が少ない場合、熱処理や溶接時にCrと反応するC量が限られているため、形成される炭化物は少なくなります。このような粒界腐食への対策を施したステンレス鋼が、SUS316Lです。C含有量が少ないSUS316LではCr系炭化物の析出がしにくく、溶接時の粒界腐食を防げる合金設計になっています。
SUS316にはCとCrが含まれており、これらの成分が反応するとCr系炭化物が形成されます。Cr系炭化物は、主に熱処理や溶接を行う際に形成される化合物です。SUS316などのオーステナイト系ステンレス鋼は、600~900℃の温度域に加熱されると、Cr系炭化物が結晶粒界に析出する特徴があります。
金属材料は、原子が規則正しく配列した「結晶構造」が1つに集まることで、「結晶粒」が構成されています。結晶粒界とは、結晶粒と結晶粒の境界のことです。オーステナイト系ステンレス鋼を600~900℃の加熱した場合、結晶粒界にCr系炭化物が形成されるため、結晶粒のまわりに炭化物が配列します。
このように結晶粒界にCr系炭化物が析出すると、炭化物の近くの領域でCr濃度が低下します。なぜなら結晶粒界に析出したCr系炭化物の形成のために、Crを奪われるからです。Cr濃度が低下した領域では、Crが少ないため耐食性が低下します。
したがって、Cr量が少ない領域が結晶粒界に形成されますから、この領域は腐食されやすい状態です。溶接を行う場合、Cr量が少ない結晶粒界が優先的に腐食されるため、「粒界腐食」が発生しやすくなります。
粒界腐食を抑制するための方法の一つが、C量を低減することです。C量が少ない場合、熱処理や溶接時にCrと反応するC量が限られているため、形成される炭化物は少なくなります。このような粒界腐食への対策を施したステンレス鋼が、SUS316Lです。C含有量が少ないSUS316LではCr系炭化物の析出がしにくく、溶接時の粒界腐食を防げる合金設計になっています。
加工性の違い
SUS316Lは、SUS316に比べて加工性にも優れています。加工性に優れる理由も、C量が少ないからです。そもそもステンレス鋼にCが含まれている理由は、硬度や強度を向上させるためです。
実際にJIS規格では、C量が0.08%以下であるSUS316の引張強度(引張試験で得られた強度)は、520MPa以上(MPaは強度の単位)と示されています。一方でC量が0.030%以下であるSUS316Lの引張強度は、480MPa以上です。以上のようにC量が多い材料は、硬度が高くなる性質を示します。
しかしC量が多い材料は、加工が難しくなることがデメリットです。C量が多く含まれている材料は、硬度が向上するため変形が起こりにくくなります。また材料が脆くなるため、加工時に強い衝撃を受けると、割れたり砕けたりする恐れがあります。
したがって材料の加工性を向上するためには、C量の低減が有効です。SUS316Lは、SUS316に比べてC含有量が少なくなっていますから、優れた加工性を有しています。
実際にJIS規格では、C量が0.08%以下であるSUS316の引張強度(引張試験で得られた強度)は、520MPa以上(MPaは強度の単位)と示されています。一方でC量が0.030%以下であるSUS316Lの引張強度は、480MPa以上です。以上のようにC量が多い材料は、硬度が高くなる性質を示します。
しかしC量が多い材料は、加工が難しくなることがデメリットです。C量が多く含まれている材料は、硬度が向上するため変形が起こりにくくなります。また材料が脆くなるため、加工時に強い衝撃を受けると、割れたり砕けたりする恐れがあります。
したがって材料の加工性を向上するためには、C量の低減が有効です。SUS316Lは、SUS316に比べてC含有量が少なくなっていますから、優れた加工性を有しています。
SUS316とSUS316Lの加工方法
SUS316とSUS316Lなどのステンレス鋼は、次の加工方法が用いられます。
・曲げ加工
・絞り加工
・切削加工
・曲げ加工
・絞り加工
・切削加工
曲げ加工
曲げ加工は、プレス加工機や金型を用いた加工方法です。金型は「パンチ」と「ダイ」の2種類があり、パンチは上側の金型であるのに対して、ダイは下側の金型です。ダイとパンチの間に材料を挟み、上からパンチで負荷をかけることで曲げ加工を行います。
曲げ加工には複数の種類があり、次のような方法があります。
・V曲げ
・エアーベンディング(自由曲げ)
・コイニング(矯正曲げ)
・R曲げ
・ロール曲げ
・Z曲げ
・ヘミング曲げ
たとえばV曲げは、V型の金型を使用しており、一般的に使用される曲げ加工です。V曲げのほかにも製品の形状に合わせて使い分けできることが、曲げ加工の強みだといえます。しかしステンレス鋼を曲げ加工する場合、曲げ加工の精度に注意が必要です。なぜならステンレス鋼は、スプリングバックが生じやすいからです。
スプリングバックとは、加工後にもとの形状に戻ろうとする現象のことです。ステンレス鋼の加工の際は、スプリングバックを考慮した加工が重要になるため、実績のある企業に加工を依頼すると良いでしょう。
曲げ加工には複数の種類があり、次のような方法があります。
・V曲げ
・エアーベンディング(自由曲げ)
・コイニング(矯正曲げ)
・R曲げ
・ロール曲げ
・Z曲げ
・ヘミング曲げ
たとえばV曲げは、V型の金型を使用しており、一般的に使用される曲げ加工です。V曲げのほかにも製品の形状に合わせて使い分けできることが、曲げ加工の強みだといえます。しかしステンレス鋼を曲げ加工する場合、曲げ加工の精度に注意が必要です。なぜならステンレス鋼は、スプリングバックが生じやすいからです。
スプリングバックとは、加工後にもとの形状に戻ろうとする現象のことです。ステンレス鋼の加工の際は、スプリングバックを考慮した加工が重要になるため、実績のある企業に加工を依頼すると良いでしょう。
絞り加工
絞り加工とは、板状の材料(板材)から容器状に加工する方法のことです。絞り加工には、容器の底を深く加工する「深絞り加工」と、底を浅くする「浅絞り加工」があります。
絞り加工ではパンチを用いて、ダイにセットした板材に押し当てながら加工を行います。加工後の形状は多岐にわたり、一例は下記のとおりです。
・円筒
・角筒(四角状)
・円錐
・異形(複雑な形状)
絞り加工ではパンチを用いて、ダイにセットした板材に押し当てながら加工を行います。加工後の形状は多岐にわたり、一例は下記のとおりです。
・円筒
・角筒(四角状)
・円錐
・異形(複雑な形状)
切削加工
切削加工も、ステンレス鋼に使用される加工方法の一つです。切削加工では、金属材料を切ったり削ったりする加工方法であり、「旋削加工」と「転削加工」に大きく分けられます。
旋削加工では金属材料を回転させながら、バイトなどの工具を用いて加工します。旋削加工が使われる形状は、円柱や円筒などです。旋削加工の適用例は、ボルトやシャフトなどが挙げられます。
一方で金属材料を固定しておき、工具を回転させながら加工を行う方法が転削加工です。転削加工では表面の加工のほか、複雑な加工に向いている加工だといえます。
ステンレス鋼の切削加工は、加工ノウハウが必要になります。なぜならステンレス鋼は熱伝導率が低いため、加工で発生した熱が工具から逃げず、刃先が破損する原因になるからです。また「加工硬化」が生じることも、ステンレス鋼の切削加工が難しい要因です。加工硬化とは、加工を行うことで材料が硬くなる現象を指します。
ステンレス鋼の切削加工の際は、金属材料や加工の知識に豊富な企業に依頼することをオススメします。
旋削加工では金属材料を回転させながら、バイトなどの工具を用いて加工します。旋削加工が使われる形状は、円柱や円筒などです。旋削加工の適用例は、ボルトやシャフトなどが挙げられます。
一方で金属材料を固定しておき、工具を回転させながら加工を行う方法が転削加工です。転削加工では表面の加工のほか、複雑な加工に向いている加工だといえます。
ステンレス鋼の切削加工は、加工ノウハウが必要になります。なぜならステンレス鋼は熱伝導率が低いため、加工で発生した熱が工具から逃げず、刃先が破損する原因になるからです。また「加工硬化」が生じることも、ステンレス鋼の切削加工が難しい要因です。加工硬化とは、加工を行うことで材料が硬くなる現象を指します。
ステンレス鋼の切削加工の際は、金属材料や加工の知識に豊富な企業に依頼することをオススメします。
SUS316とSUS316Lの組織
SUS316とSUS316Lを製品として使用する際、1010~1050℃での固溶化熱処理が欠かせません。なぜなら固溶化熱処理を施していない状態では、下記2点が懸念されるためです。
・応力腐食割れ
・粒界腐食
応力腐食割れとは、応力(材料内部に発生する力の指標)によって材料に割れが発生する現象のことです。応力腐食割れは海水の近くなど、塩素イオンにさらされる環境で生じます。応力腐食割れを防ぐためには、金属材料に蓄積された応力を取り除く必要があります。高温で熱処理を行うと、材料に蓄積された応力を除去できますから、SUS316とSUS316Lを使用する際に固溶化熱処理が必須です。
固溶化熱処理を行うことで、粒界腐食も防止できます。先述したように粒界腐食は、Cr系炭化物の近くの領域でCr濃度が低下することが原因で生じます。そのため粒界腐食を防ぐためには、Cr系炭化物の析出を抑えることが重要であり、固溶化熱処理も有効な手段の一つです。なぜなら固溶化熱処理を施して炭化物をFe母相に固溶させることで、炭化物の析出を抑制できるからです。
炭化物を固溶するためには、SUS316とSUS316Lの場合1010~1050℃が適しており、急冷による冷却が必要になります。
熱処理後を行ったオーステナイト系ステンレス鋼の組織は、加工時に硬化する「加工硬化」を示す性質があります。加工時の応力を受けると、オーステナイト組織が「マルテンサイト組織」と呼ばれる硬い組織に変化するためです。マルテンサイト組織の発現によって伸びも向上するため、加工後のオーステナイト系ステンレス鋼は、耐食性と延性に優れています。
・応力腐食割れ
・粒界腐食
応力腐食割れとは、応力(材料内部に発生する力の指標)によって材料に割れが発生する現象のことです。応力腐食割れは海水の近くなど、塩素イオンにさらされる環境で生じます。応力腐食割れを防ぐためには、金属材料に蓄積された応力を取り除く必要があります。高温で熱処理を行うと、材料に蓄積された応力を除去できますから、SUS316とSUS316Lを使用する際に固溶化熱処理が必須です。
固溶化熱処理を行うことで、粒界腐食も防止できます。先述したように粒界腐食は、Cr系炭化物の近くの領域でCr濃度が低下することが原因で生じます。そのため粒界腐食を防ぐためには、Cr系炭化物の析出を抑えることが重要であり、固溶化熱処理も有効な手段の一つです。なぜなら固溶化熱処理を施して炭化物をFe母相に固溶させることで、炭化物の析出を抑制できるからです。
炭化物を固溶するためには、SUS316とSUS316Lの場合1010~1050℃が適しており、急冷による冷却が必要になります。
熱処理後を行ったオーステナイト系ステンレス鋼の組織は、加工時に硬化する「加工硬化」を示す性質があります。加工時の応力を受けると、オーステナイト組織が「マルテンサイト組織」と呼ばれる硬い組織に変化するためです。マルテンサイト組織の発現によって伸びも向上するため、加工後のオーステナイト系ステンレス鋼は、耐食性と延性に優れています。
SUS316とSUS316Lの用途
SUS316やSUS316Lなどのオーステナイト系ステンレス鋼は、下記の用途に使用されます。
・海水ポンプ
・配管部材
・船舶部品
・バルブ
・薬品タンク
上記のように、耐食性に優れるSUS316やSUS316Lは、海水や塩素イオンにさらされる環境に適している合金です。
・海水ポンプ
・配管部材
・船舶部品
・バルブ
・薬品タンク
上記のように、耐食性に優れるSUS316やSUS316Lは、海水や塩素イオンにさらされる環境に適している合金です。