金型材用の合金工具鋼には、SKD11とSKD61が広く使われています。これらの合金は、それぞれ使用用途や性質が異なるため、各材料を使いこなすためには正しく理解することが重要です。本記事では、SKD11とSKD61の特徴や加工方法、主な用途について説明します。SKD11とSKD61の知識を深めて、各合金の違いを知りたい方は、ぜひ参考にしてください。
SKD11とSKD61について
SKD11とSKD61は、頭文字に「SKD」がついている合金です。SKDとは、「Steel Kougu Dies」の各単語の頭文字をとった名称で、金型工具鋼のことを指します。SKDの後に続く数字は、合金の種類によって分類番号が割り振られています。SKD11とSKD61の各合金について、それぞれの特徴を確認していきましょう。
SKD11とは?
SKD11とは、主に冷間加工用の金型に用いられる合金工具鋼の一つです。合金工具鋼とは、0.55~1.5%の炭素を含む「炭素工具鋼」に対して、合金元素を添加して改良した鋼を指します。
したがって合金工具鋼は、炭素工具鋼と比較して良好な性質をもち、下記4つの特性に優れています。
・焼入れ性(熱処理で高い硬度を得る特性の指標)
・耐摩耗性(摩耗のしにくさの指標)
・耐衝撃性(衝撃に対する耐久性の指標)
・耐熱性(高温状況下でも高い特性を維持する指標)
合金工具鋼の中でも、SKD11は耐摩耗性に優れており、高い硬度を有する特徴をもつ合金です。SKD11の主成分はFe(鉄)であり、JIS規格(日本工業規格)によって下記のように成分が定められています。
・C(炭素)1.40~1.60%
・Si(ケイ素)0.40%以下
・Mn(マンガン)0.60%以下
・P(リン)0.030%以下
・S(硫黄)0.030%以下
・Cr(クロム)11.00~13.00%
・Mo(モリブデン)0.80~1.20%
・V(バナジウム)0.20~0.50%
したがって合金工具鋼は、炭素工具鋼と比較して良好な性質をもち、下記4つの特性に優れています。
・焼入れ性(熱処理で高い硬度を得る特性の指標)
・耐摩耗性(摩耗のしにくさの指標)
・耐衝撃性(衝撃に対する耐久性の指標)
・耐熱性(高温状況下でも高い特性を維持する指標)
合金工具鋼の中でも、SKD11は耐摩耗性に優れており、高い硬度を有する特徴をもつ合金です。SKD11の主成分はFe(鉄)であり、JIS規格(日本工業規格)によって下記のように成分が定められています。
・C(炭素)1.40~1.60%
・Si(ケイ素)0.40%以下
・Mn(マンガン)0.60%以下
・P(リン)0.030%以下
・S(硫黄)0.030%以下
・Cr(クロム)11.00~13.00%
・Mo(モリブデン)0.80~1.20%
・V(バナジウム)0.20~0.50%
SKD61とは?
SKD61とは、主に熱間加工用の金型に用いられる合金工具鋼です。SKD61は焼入れ性が良く、高温強度や靭性のバランスに優れています。
JIS規格で定められている化学成分は、下記のとおりです。
・C(炭素)0.35~0.42%
・Si(ケイ素)0.80~1.20%
・Mn(マンガン)0.25~0.50%
・P(リン)0.030%以下
・S(硫黄)0.020%以下
・Cr(クロム)4.80~5.50%
・Mo(モリブデン)1.00~1.50%
・V(バナジウム)0.80~1.15%
熱間工具鋼として使用されるSKD61は、特に靭性が重要な特性であるため、C量が低く設計されている特徴があります。
JIS規格で定められている化学成分は、下記のとおりです。
・C(炭素)0.35~0.42%
・Si(ケイ素)0.80~1.20%
・Mn(マンガン)0.25~0.50%
・P(リン)0.030%以下
・S(硫黄)0.020%以下
・Cr(クロム)4.80~5.50%
・Mo(モリブデン)1.00~1.50%
・V(バナジウム)0.80~1.15%
熱間工具鋼として使用されるSKD61は、特に靭性が重要な特性であるため、C量が低く設計されている特徴があります。
SKD11とSKD61の違い
SKD11とSKD61は、どちらの合金も工具鋼として使用されますが、得られる特性や合金に含まれる成分が異なります。各合金における主な違いは、下記の3点です。
・硬度
・靭性
・成分
上記の3点に着目し、SKD11とSKD61の特徴の違いを確認しておきましょう。
・硬度
・靭性
・成分
上記の3点に着目し、SKD11とSKD61の特徴の違いを確認しておきましょう。
硬度の違い
SKD11とSKD61の1つ目の違いは、硬度が異なることです。SKD11はSKD61に比べて、高硬度であることが特徴です。焼入れ・焼戻し処理を行ったSKD11は、58HRC(ロックウェル硬さの単位)以上の硬さになります。
焼入れとは、硬度を向上させるための熱処理のことを指し、焼戻しは靭性を向上させるための熱処理のことです。焼入れを行うと合金の硬度は向上しますが、もろくて割れやすい性質をもつため、焼戻しを行うことで割れを防ぐ必要があります。
一方でSKD61は、焼入れ・焼戻し処理を行うことで、50HRC以上の硬さになります。
このように硬度に違いが生じる理由は、各合金に含まれる添加元素の量が異なり、成分が違っているためです。たとえばSKD11では、SKD61に比べてC量が多いため、58HRC以上の高い硬度が得られます。C量が多ければ多いほど、FeとCから形成される化合物が多く生成され、この化合物が硬い性質を示すためです。
焼入れとは、硬度を向上させるための熱処理のことを指し、焼戻しは靭性を向上させるための熱処理のことです。焼入れを行うと合金の硬度は向上しますが、もろくて割れやすい性質をもつため、焼戻しを行うことで割れを防ぐ必要があります。
一方でSKD61は、焼入れ・焼戻し処理を行うことで、50HRC以上の硬さになります。
このように硬度に違いが生じる理由は、各合金に含まれる添加元素の量が異なり、成分が違っているためです。たとえばSKD11では、SKD61に比べてC量が多いため、58HRC以上の高い硬度が得られます。C量が多ければ多いほど、FeとCから形成される化合物が多く生成され、この化合物が硬い性質を示すためです。
靭性の違い
靭性が異なることも、SKD11とSKD61の相違点です。SKD11のシャルピー衝撃値が約10~20 J/cm2であるのに対して、SKD61では200J/cm2以上の値を示します。
シャルピー衝撃値は、靭性の指標として使われており、シャルピー衝撃値が高い材料は靭性に優れているといえます。SKD11やSKD61を金型として使用する際、外部から衝撃を受けて割れが発生すると、トラブルになりかねません。
そのため、金型材などの衝撃を強く受ける用途では、衝撃に耐えられる材料選定が大切です。強い衝撃を受けて割れが発生したり、破壊したりするトラブルを防ぐためには、材料自身が高い靭性を有することが重要になります。
靭性に違いが生じる原因は、合金中に含まれるC量が異なるからです。SKD11と比較して、SKD61に含まれるC量は少ないため、硬くてもろい化合物の形成を低減でき、良好な靭性が得られます。
またV量が多いことも、SKD61が優れた靭性を示す理由の一つです。Vは鋼に添加する場合、靭性を向上させる効果のある元素として知られています。
シャルピー衝撃値は、靭性の指標として使われており、シャルピー衝撃値が高い材料は靭性に優れているといえます。SKD11やSKD61を金型として使用する際、外部から衝撃を受けて割れが発生すると、トラブルになりかねません。
そのため、金型材などの衝撃を強く受ける用途では、衝撃に耐えられる材料選定が大切です。強い衝撃を受けて割れが発生したり、破壊したりするトラブルを防ぐためには、材料自身が高い靭性を有することが重要になります。
靭性に違いが生じる原因は、合金中に含まれるC量が異なるからです。SKD11と比較して、SKD61に含まれるC量は少ないため、硬くてもろい化合物の形成を低減でき、良好な靭性が得られます。
またV量が多いことも、SKD61が優れた靭性を示す理由の一つです。Vは鋼に添加する場合、靭性を向上させる効果のある元素として知られています。
成分の違い
SKD11とSKD61に含まれる成分の種類は同じですが、添加量に明確な違いがあります。各合金によって、それぞれ目標とする特性が異なるためです。具体的には、下記の元素量に明確な差が見られます。
・C
・Cr
・Mo
・V
SKD11は、高い硬度が要求される用途に使用されるため、SKD61に比べてC量が多く含まれています。C量を増加することで、硬い化合物を多く形成させて硬度の向上を狙うためです。
一方でSKD61は靭性も要求されるため、C量は比較的少なく設計されています。硬度と靭性の関係は、トレードオフの関係です。つまり、C量が多ければ多いほど硬度が向上しますが、靭性は低下します。同様に、C量が少ないと化合物を形成しにくくなり、硬度は低下しますが優れた靭性が得られます。
SKD61は、硬度をやや低めにすることで高い靭性を有しており、硬度と靭性のバランスに優れた材料の一つです。
高い硬度を得るためには、C以外の添加元素も重要です。たとえばCrを添加すると、Cr系の炭化物が形成されるため、高硬度が得られます。したがってCr含有量が多いSKD11は、SKD61と比較して硬度に優れる特徴があります。
さらにCr系の炭化物は、耐摩耗性にも優れる性質があるため、SKD11は耐摩耗性も良好な合金です。
SKD61は熱間加工時の強度が重要になりますから、MoとVが多く含まれていることも特徴の一つです。MoとVは熱間強度を向上させる役割があるだけでなく、耐摩耗性の向上にも寄与しています。
以上のように、使用用途に必要な特性に応じて添加元素が選定されており、添加元素の量が特性に影響を及ぼしています。
・C
・Cr
・Mo
・V
SKD11は、高い硬度が要求される用途に使用されるため、SKD61に比べてC量が多く含まれています。C量を増加することで、硬い化合物を多く形成させて硬度の向上を狙うためです。
一方でSKD61は靭性も要求されるため、C量は比較的少なく設計されています。硬度と靭性の関係は、トレードオフの関係です。つまり、C量が多ければ多いほど硬度が向上しますが、靭性は低下します。同様に、C量が少ないと化合物を形成しにくくなり、硬度は低下しますが優れた靭性が得られます。
SKD61は、硬度をやや低めにすることで高い靭性を有しており、硬度と靭性のバランスに優れた材料の一つです。
高い硬度を得るためには、C以外の添加元素も重要です。たとえばCrを添加すると、Cr系の炭化物が形成されるため、高硬度が得られます。したがってCr含有量が多いSKD11は、SKD61と比較して硬度に優れる特徴があります。
さらにCr系の炭化物は、耐摩耗性にも優れる性質があるため、SKD11は耐摩耗性も良好な合金です。
SKD61は熱間加工時の強度が重要になりますから、MoとVが多く含まれていることも特徴の一つです。MoとVは熱間強度を向上させる役割があるだけでなく、耐摩耗性の向上にも寄与しています。
以上のように、使用用途に必要な特性に応じて添加元素が選定されており、添加元素の量が特性に影響を及ぼしています。
SKD11とSKD61の加工方法
SKD11とSKD61は高い硬度を有するため、加工が難しい材料です。硬度が高い場合、加工時に割れが発生しやすいからです。SKD11やSKD61を加工する際、一般的には放電加工や切削加工を使用します。
放電加工
一つ目の加工方法は、放電加工です。放電加工とは、加工する材料と電極の間に火花を発生させ、火花の熱で金属材料を溶かしながら飛散させる加工方法です。
金属を溶かして加工する放電加工では、高い硬度を有する材料でも、簡単に加工できます。しかし放電加工で加工した材料は、微小な割れが発生したり変形したりする懸念があるため、注意が必要です。なぜなら、放電加工での加工時に発生する熱影響を受けるためです。
したがって、放電加工では材料加工のノウハウが必要になりますから、加工実績のある企業に加工依頼することをおすすめします。
金属を溶かして加工する放電加工では、高い硬度を有する材料でも、簡単に加工できます。しかし放電加工で加工した材料は、微小な割れが発生したり変形したりする懸念があるため、注意が必要です。なぜなら、放電加工での加工時に発生する熱影響を受けるためです。
したがって、放電加工では材料加工のノウハウが必要になりますから、加工実績のある企業に加工依頼することをおすすめします。
切削加工
切削加工も、SKD11とSKD61に使われる加工方法の一つです。切削加工では、あらゆる加工方法の中でも高い精度が得られる特徴があります。また切削加工は、58HRC以上の高硬度を有する材料でも加工できます。
切削工具に使われる材質は、高速で加工できる高速度鋼や、硬い材料として知られるダイヤモンドなどです。加工材料にあわせて工具の材質を正しく選択することで、工具の摩耗を防げるため、幅広い硬さの材料を加工できるようになります。
SKD11やSKD61の切削加工を外注で依頼する際、コストや品質、納期の面から検討すると良いでしょう。
切削加工を依頼する際は、加工費用だけでなく、形状や加工工程によって変動する費用も検討が必要です。また切削加工では、材料が割れずに精度よく加工することも重要になりますから、高品質で仕上げてもらえる企業を選ぶことをおすすめします。
さらに、素早く加工を行うためには、依頼先の企業が短納期で対応していることも大切なポイントです。
フィリールでは、高品質と短納期を実現する加工を行っています。ベトナムで海外生産を行うなどコスト削減を図り、高品質での加工ができる強みがあります。材料加工に失敗したくないと考えている方は、ぜひフィリールに見積依頼や相談をしてみてはいかがでしょうか。
切削工具に使われる材質は、高速で加工できる高速度鋼や、硬い材料として知られるダイヤモンドなどです。加工材料にあわせて工具の材質を正しく選択することで、工具の摩耗を防げるため、幅広い硬さの材料を加工できるようになります。
SKD11やSKD61の切削加工を外注で依頼する際、コストや品質、納期の面から検討すると良いでしょう。
切削加工を依頼する際は、加工費用だけでなく、形状や加工工程によって変動する費用も検討が必要です。また切削加工では、材料が割れずに精度よく加工することも重要になりますから、高品質で仕上げてもらえる企業を選ぶことをおすすめします。
さらに、素早く加工を行うためには、依頼先の企業が短納期で対応していることも大切なポイントです。
フィリールでは、高品質と短納期を実現する加工を行っています。ベトナムで海外生産を行うなどコスト削減を図り、高品質での加工ができる強みがあります。材料加工に失敗したくないと考えている方は、ぜひフィリールに見積依頼や相談をしてみてはいかがでしょうか。
SKD11とSKD61の組織
SKD11とSKD61の組織は、それぞれ異なる特徴があります。合金の組織は、材料の特性に大きく影響を及ぼすため、組織の違いを理解することが大切です。具体的に説明しますので、各合金の特徴をおさえておきましょう。
SKD11の組織
適切な熱処理を施すことで、SKD11は優れた特性を示します。最終製品を得るために必要な熱処理は、次の3つです。
・焼なまし
・焼入れ
・焼戻し
SKD11の熱処理では、はじめに焼なましによる熱処理を行います。焼なましとは、材料を高温状態の炉内で保持することで、成分の偏析を防ぐための熱処理です。硬度や靭性といった目的とする特性を得るためには、金属材料の組織が均一であることが重要です。
SKD11の焼なまし条件は、820~870℃での徐冷です。徐冷は、徐々に温度を下げる冷却方法であり、冷却方法によって最終的に得られる組織は異なります。
焼なましが完了した後、焼入れによる熱処理を行います。焼入れとは、材料の硬度を向上させるための熱処理のことです。SKD11の焼入れでは、空冷と呼ばれる冷却方法を利用します。空冷とは、熱処理で高温状態になった材料を、熱処理炉から取り出して大気中で冷却する方法のことです。
SKD11の焼入れ条件は、1020℃での空冷です。
最後に、焼戻しによる熱処理を行います。焼戻しとは、焼入れが完了した材料を再び熱処理することで、材料の靭性を回復させるための熱処理です。
焼入れ直後の材料は、硬度が高い特徴がありますが、もろくて割れやすいデメリットもあります。材料の使用中に割れを防ぐためには、靭性を回復させる焼戻しが重要になります。焼戻し温度は焼入れ温度よりも低く、SKD11の焼戻し条件は550℃での空冷です。
以上のように熱処理を施したSKD11の組織は、次の3つの組織から形成されます。
・母相(マトリックス)
・炭化物
・非金属介在物
マトリックスはSKD11のベースになる組織であり、焼入れ直後の状態は硬い性質をもつ組織(マルテンサイト)です。このマルテンサイト組織が形成されることで、高い硬度が得られます。
SKD11で発現する主な炭化物は、Fe系とCr系の炭化物です。いずれの炭化物も、マトリックスに比べて硬い性質があるため、SKD11は耐摩耗性に優れる性質があります。炭化物の量が多いほど硬度は向上しますが、切削加工が難しくなるため注意が必要です。
非金属介在物は、材料中に含まれる酸化物や硫黄物のことです。マトリックスや炭化物とは異なり、非金属介在物は材料特性に悪影響を及ぼします。ですから、材料の特性を十分に発揮するためには、非金属介在物を可能な限り低減することが重要です。
・焼なまし
・焼入れ
・焼戻し
SKD11の熱処理では、はじめに焼なましによる熱処理を行います。焼なましとは、材料を高温状態の炉内で保持することで、成分の偏析を防ぐための熱処理です。硬度や靭性といった目的とする特性を得るためには、金属材料の組織が均一であることが重要です。
SKD11の焼なまし条件は、820~870℃での徐冷です。徐冷は、徐々に温度を下げる冷却方法であり、冷却方法によって最終的に得られる組織は異なります。
焼なましが完了した後、焼入れによる熱処理を行います。焼入れとは、材料の硬度を向上させるための熱処理のことです。SKD11の焼入れでは、空冷と呼ばれる冷却方法を利用します。空冷とは、熱処理で高温状態になった材料を、熱処理炉から取り出して大気中で冷却する方法のことです。
SKD11の焼入れ条件は、1020℃での空冷です。
最後に、焼戻しによる熱処理を行います。焼戻しとは、焼入れが完了した材料を再び熱処理することで、材料の靭性を回復させるための熱処理です。
焼入れ直後の材料は、硬度が高い特徴がありますが、もろくて割れやすいデメリットもあります。材料の使用中に割れを防ぐためには、靭性を回復させる焼戻しが重要になります。焼戻し温度は焼入れ温度よりも低く、SKD11の焼戻し条件は550℃での空冷です。
以上のように熱処理を施したSKD11の組織は、次の3つの組織から形成されます。
・母相(マトリックス)
・炭化物
・非金属介在物
マトリックスはSKD11のベースになる組織であり、焼入れ直後の状態は硬い性質をもつ組織(マルテンサイト)です。このマルテンサイト組織が形成されることで、高い硬度が得られます。
SKD11で発現する主な炭化物は、Fe系とCr系の炭化物です。いずれの炭化物も、マトリックスに比べて硬い性質があるため、SKD11は耐摩耗性に優れる性質があります。炭化物の量が多いほど硬度は向上しますが、切削加工が難しくなるため注意が必要です。
非金属介在物は、材料中に含まれる酸化物や硫黄物のことです。マトリックスや炭化物とは異なり、非金属介在物は材料特性に悪影響を及ぼします。ですから、材料の特性を十分に発揮するためには、非金属介在物を可能な限り低減することが重要です。
SKD61の組織
SKD61の熱処理では、SKD11と同様に焼なまし後に焼入れを行い、最後に焼戻しを施します。各熱処理の条件は、下記のとおりです。
・焼なまし条件は、830~880℃での徐冷
・焼入れ条件は、1030℃での空冷
・焼戻し条件は、180℃での空冷
上記の熱処理を施したSKD61は、SKD11と同じくマトリックスや炭化物、非金属介在物から形成される組織を有します。
SKD11とは炭化物の量が異なるため、SKD61が有する特性に差が見られます。たとえばCr系の炭化物はSKD11に比べて少ないため、炭化物量に応じて硬度が低くなる点が特徴的です。
・焼なまし条件は、830~880℃での徐冷
・焼入れ条件は、1030℃での空冷
・焼戻し条件は、180℃での空冷
上記の熱処理を施したSKD61は、SKD11と同じくマトリックスや炭化物、非金属介在物から形成される組織を有します。
SKD11とは炭化物の量が異なるため、SKD61が有する特性に差が見られます。たとえばCr系の炭化物はSKD11に比べて少ないため、炭化物量に応じて硬度が低くなる点が特徴的です。
SKD11とSKD61の主な用途
SKD11とSKD61ではそれぞれ特徴が違っているため、異なる用途で使用されます。それぞれの使用用途について、具体的に把握しておきましょう。
SKD11の用途
SKD11は、主に金型プレスなどの冷間加工用金型材として使用されます。冷間加工とは、室温に近い温度で加工を行う方法です。表面仕上がりに優れることや、高い寸法精度と形状精度が得られることが、冷間加工の特徴です。
冷間加工では、高い強度や耐摩耗性が要求されるため、高強度と耐摩耗性を両立するSKD11は冷間加工に適した材料だといえます。
具体的には、冷間鍛造や冷間プレスなどの冷間加工や、ファインブランキング(高精度で行うプレス加工)の用途に使用されています。
冷間加工では、高い強度や耐摩耗性が要求されるため、高強度と耐摩耗性を両立するSKD11は冷間加工に適した材料だといえます。
具体的には、冷間鍛造や冷間プレスなどの冷間加工や、ファインブランキング(高精度で行うプレス加工)の用途に使用されています。
SKD61の用途
SKD61の主な使用用途は、熱間加工用の金型材です。熱間加工とは、一般的に数百℃以上の高温下で加工を行う方法を指します。
一般的に加工時に負荷が発生すると、材料に割れが発生する恐れがあります。加工時の割れを防ぐためには、金属材料がやわらかい状態であることが重要です。熱間加工では、金属材料がやわらかくなる高温状態で加工するため、加工時の割れを防止できます。
このように熱間加工では割れが発生しにくいことから、加工時に割れが発生しやすい「複雑形状」や「大型部品」の加工に適しているといえます。
したがって、大型の金型にも適用されている合金がSKD61です。このほか、熱間プレスや押出工具、刃物などの幅広い用途に使用されています。
一般的に加工時に負荷が発生すると、材料に割れが発生する恐れがあります。加工時の割れを防ぐためには、金属材料がやわらかい状態であることが重要です。熱間加工では、金属材料がやわらかくなる高温状態で加工するため、加工時の割れを防止できます。
このように熱間加工では割れが発生しにくいことから、加工時に割れが発生しやすい「複雑形状」や「大型部品」の加工に適しているといえます。
したがって、大型の金型にも適用されている合金がSKD61です。このほか、熱間プレスや押出工具、刃物などの幅広い用途に使用されています。