SCMとSNCMはいずれも機械構造用炭素鋼であり、添加元素の違いによって分類されます。SCMとSNCMは熱処理により強度を向上させる合金で、機械的特性に優れています。各合金の違いや加工方法、用途について紹介します。合金の特徴を理解し、加工の知識を深めたい方は最後までご覧ください。
SCM、SNCMとは?
SCMとSNCMは、添加元素を含む機械構造用炭素鋼です。それぞれの添加元素の種類は違うため、それぞれ異なる機械的特性が得られます。
機械構造用炭素鋼
機械構造用合金鋼は、産業用機械や輸送用機械に使用される合金で、強度と靭性に優れています。その中でもC(炭素)を0.10~0.60%含む合金が、機械構造用炭素鋼です。添加元素や成分の違いによって、以下の種類に分類できます。
・SNC(ニッケルクロム鋼)
・SNCM(ニッケルクロムモリブデン鋼)
・SCM(クロムモリブデン鋼)
・SMN(マンガン鋼)
・SMNC(マンガンクロム鋼)
・SACM(アルミニウムモリブデン鋼)
C量が多い場合、鉄と反応して炭化物を形成するため、合金の硬さは高いことが特徴です。またCr(クロム)やMo(モリブデン)を添加した合金は高い引張強さを示し、Ni(ニッケル)やMn(マンガン)を添加すると靭性が向上する傾向にあります。
・SNC(ニッケルクロム鋼)
・SNCM(ニッケルクロムモリブデン鋼)
・SCM(クロムモリブデン鋼)
・SMN(マンガン鋼)
・SMNC(マンガンクロム鋼)
・SACM(アルミニウムモリブデン鋼)
C量が多い場合、鉄と反応して炭化物を形成するため、合金の硬さは高いことが特徴です。またCr(クロム)やMo(モリブデン)を添加した合金は高い引張強さを示し、Ni(ニッケル)やMn(マンガン)を添加すると靭性が向上する傾向にあります。
SCMとは?
SCMは、CrとMoを添加した合金です。通称「クロモリ」と呼ばれ、自転車のフレームやボルトなどに使用されます。アルファベットで表記される「SCM」は、各元素の頭文字に由来しています。
・S:Steel(鉄)
・C:Cr(クロム)
・M:Mo(モリブデン)
SCMは強度だけでなく、耐摩耗性や靭性にも優れているため、自動車や航空機など負荷がかかる用途に使用できることが特徴です。たとえばSCM435は、比較的優れた機械的特性を有しており、主成分は以下のとおりです。
・C(炭素)0.33~0.38%
・Mn(マンガン)0.60~0.90%
・Cr(クロム)0.90~1.20%
・Mo(モリブデン)0.15~0.30%
・S:Steel(鉄)
・C:Cr(クロム)
・M:Mo(モリブデン)
SCMは強度だけでなく、耐摩耗性や靭性にも優れているため、自動車や航空機など負荷がかかる用途に使用できることが特徴です。たとえばSCM435は、比較的優れた機械的特性を有しており、主成分は以下のとおりです。
・C(炭素)0.33~0.38%
・Mn(マンガン)0.60~0.90%
・Cr(クロム)0.90~1.20%
・Mo(モリブデン)0.15~0.30%
SNCMとは?
SNCMは、CrとNiを含有した「SNC」にMoを添加した合金のため、高い強度を有しています。アルファベットで表記される「SNCM」は、次の元素名に由来しています。
・S:Steel(鉄)
・N:Ni(ニッケル)
・C:Cr(クロム)
・M:Mo(モリブデン)
SNCMは焼入性に優れ、高い靭性を特徴とする合金です。焼入性とは、材料を高温加熱した後に急冷し、硬化させる熱処理のことです。熱処理の条件を制御することで、狙いの強度に調整できます。
とくにSNCM447は強度と硬度に優れ、引張強さは1030N/mm2、シャルピー衝撃値は59J/cm2以上です。そのため、強度が求められる精密歯車や軸部品に使用されます。主な成分は、以下のとおりです。
・C(炭素)0.44~0.50%
・Si(シリコン)0.15~0.35%
・Mn(マンガン)0.60~0.90%
・P(リン)0.030%以下
・S(硫黄)0.030%以下
・Ni(ニッケル)1.60~2.00%
・Cr(クロム)0.60~1.00%
・Mo(モリブデン)0.15~0.30%
・S:Steel(鉄)
・N:Ni(ニッケル)
・C:Cr(クロム)
・M:Mo(モリブデン)
SNCMは焼入性に優れ、高い靭性を特徴とする合金です。焼入性とは、材料を高温加熱した後に急冷し、硬化させる熱処理のことです。熱処理の条件を制御することで、狙いの強度に調整できます。
とくにSNCM447は強度と硬度に優れ、引張強さは1030N/mm2、シャルピー衝撃値は59J/cm2以上です。そのため、強度が求められる精密歯車や軸部品に使用されます。主な成分は、以下のとおりです。
・C(炭素)0.44~0.50%
・Si(シリコン)0.15~0.35%
・Mn(マンガン)0.60~0.90%
・P(リン)0.030%以下
・S(硫黄)0.030%以下
・Ni(ニッケル)1.60~2.00%
・Cr(クロム)0.60~1.00%
・Mo(モリブデン)0.15~0.30%
SCMとSNCMの加工方法
SCMとSNCMは、主に切削加工で製品を作製します。切削加工は、工具を使用して材料を削る加工方法です。ただし強度が高い合金を加工する場合、切削が難しくなるので簡単ではありません。とくにSNCMは、添加元素により高い強度を有するため、事前に「焼なまし」で処理するケースがあります。焼なましとは、材料内部のひずみを取り除き、軟らかくするための熱処理です。
切削加工のメリット
切削加工を使用するメリットは、次の4つです。
・低コストで短納期
・高精度で加工できる
・任意の形状に加工できる
・さまざまな材料に適用可能
切削加工は「鋳造」や「鍛造」とは異なり、金型を準備する必要がないため、コストを抑えて加工できます。さらに、金型を作る時間が不要なので、ほかの加工方法よりも素早く加工できることも特徴です。
また切削加工で作製した製品は、高精度といったメリットもあります。たとえばNC加工を使用する場合、10µmレベルまで公差を調整できます。NC加工とは、プログラムに基づいて加工位置や速度を制御し、精密に加工する方法です。NCは「Numerical Control(数値制御)」が由来になっています。
形状を自由に加工できることも、切削加工のメリットです。なぜなら材料に厚さ制限がなく、加工する位置の自由度が高いためです。具体的に5軸加工では、従来の3軸加工の機能に加えて、回転させたり傾けたりできるため狙いの形状に制御できます。
切削加工はSCMやSNCMのほか、さまざまな材料に対応できます。おもな材料はアルミニウム合金やステンレス鋼、チタン、銅などです。金属に限らず、プラスチックや樹脂も加工できます。
・低コストで短納期
・高精度で加工できる
・任意の形状に加工できる
・さまざまな材料に適用可能
切削加工は「鋳造」や「鍛造」とは異なり、金型を準備する必要がないため、コストを抑えて加工できます。さらに、金型を作る時間が不要なので、ほかの加工方法よりも素早く加工できることも特徴です。
また切削加工で作製した製品は、高精度といったメリットもあります。たとえばNC加工を使用する場合、10µmレベルまで公差を調整できます。NC加工とは、プログラムに基づいて加工位置や速度を制御し、精密に加工する方法です。NCは「Numerical Control(数値制御)」が由来になっています。
形状を自由に加工できることも、切削加工のメリットです。なぜなら材料に厚さ制限がなく、加工する位置の自由度が高いためです。具体的に5軸加工では、従来の3軸加工の機能に加えて、回転させたり傾けたりできるため狙いの形状に制御できます。
切削加工はSCMやSNCMのほか、さまざまな材料に対応できます。おもな材料はアルミニウム合金やステンレス鋼、チタン、銅などです。金属に限らず、プラスチックや樹脂も加工できます。
切削加工のデメリット
切削加工には、2つのデメリットがあります。それぞれ以下のとおりです。
・高精度で加工するにはノウハウが必要
・作業者の技術力に影響される
切削加工の際、工具が摩耗して寸法精度に影響する場合があります。そのため、工具の適切な管理や材料の知識が重要です。加工ノウハウを活かすことで、工具の摩耗を抑えたり各材料に適した工具を選べたりするため、再現性の高い加工ができます。
作業者が切削加工する場合、経験がなければ各材料に最適な加工方法を選ぶことは困難です。材料に関する知識はもちろん、工具の知識も欠かせません。したがって切削加工する際、知識と経験が豊富な企業に依頼すると良いでしょう。
・高精度で加工するにはノウハウが必要
・作業者の技術力に影響される
切削加工の際、工具が摩耗して寸法精度に影響する場合があります。そのため、工具の適切な管理や材料の知識が重要です。加工ノウハウを活かすことで、工具の摩耗を抑えたり各材料に適した工具を選べたりするため、再現性の高い加工ができます。
作業者が切削加工する場合、経験がなければ各材料に最適な加工方法を選ぶことは困難です。材料に関する知識はもちろん、工具の知識も欠かせません。したがって切削加工する際、知識と経験が豊富な企業に依頼すると良いでしょう。
切削加工の種類
切削加工は大きく分けて「旋削加工」と「転削加工」の2種類があります。旋削加工は、材料を回転させながら、固定した工具で削る加工方法です。丸い形状に加工する際に、主に使用されます。
転削加工とは、材料を固定させて工具で削る加工方法です。面を削る「平面加工」や側面を削る「側面加工」などの種類があり、最終製品の形状に適した方法で加工します。
転削加工とは、材料を固定させて工具で削る加工方法です。面を削る「平面加工」や側面を削る「側面加工」などの種類があり、最終製品の形状に適した方法で加工します。
SCMとSNCMの組織
SCMとSNCMは、添加元素の種類・量によって特性が大きく異なります。たとえばNiはフェライト組織に溶け込み、硬さを向上させるための添加元素です。フェライト組織とは、比較的軟らかい性質をもつ組織であり、添加元素の効果で硬さを向上させます。さらに焼入性(焼入れによる熱処理のしやすさを示す指標)を向上するため、熱処理が必要な場合にNi添加が効果的です。
Crは炭化物を形成し、材料の硬度を向上させる元素です。高温状態でも高い硬度を示すので、温度変化で製品が軟化する心配はありません。耐摩耗性も向上させる役割を果たし、軸受鋼をはじめとした用途に適しています。
Moは炭化物を形成する元素で、硬度の向上に寄与することが特徴です。Crよりも硬度向上の効果は大きく、主にNiやCrと同時に添加されます。
Crは炭化物を形成し、材料の硬度を向上させる元素です。高温状態でも高い硬度を示すので、温度変化で製品が軟化する心配はありません。耐摩耗性も向上させる役割を果たし、軸受鋼をはじめとした用途に適しています。
Moは炭化物を形成する元素で、硬度の向上に寄与することが特徴です。Crよりも硬度向上の効果は大きく、主にNiやCrと同時に添加されます。
SCMとSNCMの用途
SNCは焼入性や機械的特性に優れているため、次の用途に使用されます。
・自動車部品
・ボルト
・ナット
・航空機部品
・自転車のフレーム
一方で、SNCMの用途は以下のとおりです。
・大型部品
・歯車
・軸部品
SNCMは、とくに高強度を要する用途に使用されています。
・自動車部品
・ボルト
・ナット
・航空機部品
・自転車のフレーム
一方で、SNCMの用途は以下のとおりです。
・大型部品
・歯車
・軸部品
SNCMは、とくに高強度を要する用途に使用されています。