機械部品の精度や外観品質が求められる現場では、「ミガキ材」を指定される場面が少なくありません。ミガキ材とは、冷間引抜加工などによって表面を滑らかに仕上げ、寸法精度を高めた鋼材を指します。黒皮材と比べて外観が美しく、寸法ばらつきが小さいため、加工工数削減や品質安定に直結します。
しかし、「なぜミガキ材を選ぶ必要があるのか」「黒皮材では代替できないのか」といった疑問を持つ設計者や購買担当者も多いでしょう。本記事では、ミガキ材の基本から用途、メリット、選定時の注意点まで体系的に解説します。
目次
ミガキ材の定義と製造方法
冷間加工による高精度仕上げ
ミガキ材は、熱間圧延材(黒皮材)をベースに冷間引抜(ドローイング)や研磨工程を加えて製造されます。冷間加工により寸法精度が向上し、表面粗さが大幅に改善されます。
| 工程 | 目的 |
|---|---|
| 熱間圧延 | 素材成形(黒皮状態) |
| 酸洗い | スケール除去 |
| 冷間引抜 | 寸法精度向上 |
| 研磨仕上げ | 表面粗さ改善 |
黒皮材との違い
外観と精度の差
黒皮材は熱間圧延後の酸化皮膜(黒皮)が残った状態の鋼材です。一方、ミガキ材は表面が滑らかで光沢があります。
| 項目 | ミガキ材 | 黒皮材 |
|---|---|---|
| 表面状態 | 滑らか・光沢あり | 酸化皮膜あり |
| 寸法精度 | 高い | 比較的粗い |
| 追加加工 | 少なく済む | 切削量が増える |
| コスト | やや高い | 安価 |
ミガキ材が選ばれる理由
① 寸法精度が高く加工時間を短縮できる
ミガキ材は外径精度が高いため、切削加工時の取り代を最小限に抑えられます。結果として加工時間の短縮や工具摩耗の低減につながります。
② 表面粗さが良好で仕上げ工程を削減できる
表面粗さが優れているため、研磨工程を省略できるケースもあります。特に摺動部品では初期摩耗の抑制にも寄与します。
③ メッキ・表面処理の品質が安定する
表面欠陥が少ないため、メッキや塗装の密着性が向上し、仕上がり品質が安定します。
主な用途と使用される部品
精度と外観品質が求められる用途
- シャフト・回転軸
- ピン・ボルト類
- ベアリング関連部品
- 油圧・空圧機器部品
- 装飾性が求められる機械部品
ミガキ材の材質種類と特徴
代表的な鋼種
| 材質 | 特徴 | 用途例 |
|---|---|---|
| SS400ミガキ | 汎用性が高い | 一般構造部品 |
| S45Cミガキ | 強度と耐摩耗性に優れる | シャフト・機械部品 |
| SCM材ミガキ | 高強度・耐疲労性 | 高負荷部品 |
ミガキ材の注意点とデメリット
① 材料コストが高い
冷間加工工程が追加されるため、黒皮材より材料単価が高くなります。
② 表面傷が目立ちやすい
表面が滑らかな分、搬送や保管時の擦り傷が外観不良の原因となる可能性があります。
③ 残留応力による変形リスク
冷間加工により残留応力が内部に蓄積しているため、大きな切削除去を行うと歪みが発生することがあります。
ミガキ材選定で失敗しないためのチェックポイント
用途に応じた選定基準
- 寸法精度が必要か
- 表面粗さ要求の有無
- 加工時間短縮の必要性
- コストとのバランス
黒皮材で十分なケース
溶接構造部材や粗加工前提の大型部品では、黒皮材の方が経済的な場合もあります。
よくある質問
まとめ:ミガキ材の理解が品質とコスト最適化を左右する
ミガキ材とは、表面精度と寸法精度を高めた高品質鋼材であり、加工効率向上や製品品質の安定化に大きく寄与します。特に精度部品や摺動部品では、その効果は顕著です。
一方で、コストや残留応力などの特性を理解せずに採用すると、思わぬ品質問題やコスト増につながる可能性もあります。用途・精度要求・加工工程を総合的に判断し、最適な材料選定を行うことが重要です。
ミガキ材の特性を正しく理解することで、設計の信頼性向上、加工効率の改善、そして製品品質の安定という大きな価値を得ることができます。