主に鋼をベースとした材料に対して、硬さを向上するために「焼入れ」による熱処理が用いられます。焼入れを実施する場合、熱処理温度や冷却方法によって、得られる機械的特性が異なることが特徴です。本記事では、焼入れの特徴と目的を解説したうえで、各種類について詳しく紹介します。焼入れをはじめとした熱処理に関して、知識を深めたい方は最後までご覧ください。
焼入れとは?
焼入れとは、主に鋼をベースとした材料の硬さを向上するための熱処理です。例えば、鉄鋼材料の焼入れでは、比較的に軟らかい「オーステナイト組織」が得られる温度まで昇温し、硬い「マルテンサイト組織」を得るために急冷します。このとき、炭素量が多いほど、硬い特性が発現します。
また冷却速度は、焼入れを実施するうえで大切な要素です。なぜなら、冷却速度が速いほどマルテンサイト組織が得られやすく、硬さを向上しやすくなるからです。冷却がゆっくりの場合、オーステナイト組織がマルテンサイト組織に変化できないため、軟らかいまま熱処理が完了してしまいます。一般的に冷却で使用されるものは、以下のとおりです。
・水
・油
・空気
水や油を使用すると、冷却速度は速いのでマルテンサイト組織が得られやすく、硬さの向上が期待できます。一方、空気を用いた冷却速度は比較的遅いため、焼入れしにくい点に注意が必要です。
また冷却速度は、焼入れを実施するうえで大切な要素です。なぜなら、冷却速度が速いほどマルテンサイト組織が得られやすく、硬さを向上しやすくなるからです。冷却がゆっくりの場合、オーステナイト組織がマルテンサイト組織に変化できないため、軟らかいまま熱処理が完了してしまいます。一般的に冷却で使用されるものは、以下のとおりです。
・水
・油
・空気
水や油を使用すると、冷却速度は速いのでマルテンサイト組織が得られやすく、硬さの向上が期待できます。一方、空気を用いた冷却速度は比較的遅いため、焼入れしにくい点に注意が必要です。
焼入れの目的
焼入れの主な目的は、材料の強度を向上することです。焼入れ後の材料は、熱処理前と組織が異なるため、下記の効果が得られます。
・疲労特性が向上する
・耐食性が向上する
焼入れによって疲労特性が向上し、長時間にわたって製品を使い続けることが可能です。疲労特性が劣っている場合、使用するうちに金属材料に負荷がかかり、最終的に破断や破壊につながります。
また耐食性が向上すると、材料がさびにくくなります。特に、水分の多い環境やアルカリ環境下で使用する用途では、高い耐食性が必要です。
・疲労特性が向上する
・耐食性が向上する
焼入れによって疲労特性が向上し、長時間にわたって製品を使い続けることが可能です。疲労特性が劣っている場合、使用するうちに金属材料に負荷がかかり、最終的に破断や破壊につながります。
また耐食性が向上すると、材料がさびにくくなります。特に、水分の多い環境やアルカリ環境下で使用する用途では、高い耐食性が必要です。
焼入れの種類
焼入れには様々な種類があり、用途に適した方法を使用すると良いでしょう。
・全体焼入れ
・表面焼入れ
・浸炭焼入れ
・真空焼入れ
・窒化焼入れ
・全体焼入れ
・表面焼入れ
・浸炭焼入れ
・真空焼入れ
・窒化焼入れ
全体焼入れ
全体焼入れは「ズブ焼入れ」とも呼ばれる方法で、材料全体を焼入れする熱処理です。全体焼入れを実施すると、材料の内部まで焼入れが施され、表面から内部に向かうにつれて緩やかに硬さが低下する特性が得られます。
材料全体を焼入れするため、サイズが大きい材料の場合、内部の焼入れが不十分になるケースがあるため、大型製品に使用する際は注意しなければなりません。
材料全体を焼入れするため、サイズが大きい材料の場合、内部の焼入れが不十分になるケースがあるため、大型製品に使用する際は注意しなければなりません。
表面焼入れ
表面焼入れは、表面のみ焼入れする熱処理です。表面焼入れにより、製品の性能向上や寿命の増加が期待できます。表面を焼入れする手段は、主に下記のとおりです。
・炎による焼入れ
・高周波による焼入れ
・電子ビームによる焼入れ
・レーザーによる焼入れ
炎を使用した焼入れでは、加熱に必要なエネルギーが少ないので、焼入れ性に乏しい材料に適用しやすいことがメリットです。ただし、表面の温度制御が難しいといったデメリットがあります。
高周波による焼入れでは、高周波コイルを用いて熱処理します。材料表面は硬く、内部は軟らかい特性を実現できることが特徴です。
電子ビームを用いた焼入れは、真空中で熱処理する方法です。電子ビームのエネルギーは大きく、効率よく熱を伝えられます。ただし、真空中で処理するため、ハンドリング性は低いことに注意しましょう。
熱源にレーザーを使用した焼入れは、レーザー焼入れと呼ばれます。急速加熱と急速冷却ができるほか、冷却材を不要とする方法です。
・炎による焼入れ
・高周波による焼入れ
・電子ビームによる焼入れ
・レーザーによる焼入れ
炎を使用した焼入れでは、加熱に必要なエネルギーが少ないので、焼入れ性に乏しい材料に適用しやすいことがメリットです。ただし、表面の温度制御が難しいといったデメリットがあります。
高周波による焼入れでは、高周波コイルを用いて熱処理します。材料表面は硬く、内部は軟らかい特性を実現できることが特徴です。
電子ビームを用いた焼入れは、真空中で熱処理する方法です。電子ビームのエネルギーは大きく、効率よく熱を伝えられます。ただし、真空中で処理するため、ハンドリング性は低いことに注意しましょう。
熱源にレーザーを使用した焼入れは、レーザー焼入れと呼ばれます。急速加熱と急速冷却ができるほか、冷却材を不要とする方法です。
浸炭焼入れ
浸炭焼入れは、材料表面に炭素を浸して炭素量を増やし、強度アップを図る熱処理です。一般的に炭素量が増加すると、材料の硬さは向上します。また浸炭焼入れ後の材料は、摩耗性が向上するにもかかわらず、内部は軟らかく靭性に優れる特徴を有します。そのため、自動車用部品や機械用部品に適した焼入れ方法です。
真空焼入れ
真空焼入れは、真空中で材料を焼入れする方法です。真空炉で熱処理するケースが多く、ガスや水、油を用いて冷却します。真空中で熱処理できるため、空気中の酸素と触れることなく、表面の酸化を防止できます。
表面が酸化すると、酸化物が形成されてさびてしまうため、後処理として「ピーリング処理」が必要です。ピーリング処理では、材料表面を削りとり酸化物を除去します。真空焼入れを用いると、ピーリング処理が不要になるため、余分な手間をかけなくて済みます。
表面が酸化すると、酸化物が形成されてさびてしまうため、後処理として「ピーリング処理」が必要です。ピーリング処理では、材料表面を削りとり酸化物を除去します。真空焼入れを用いると、ピーリング処理が不要になるため、余分な手間をかけなくて済みます。
窒化焼入れ
窒化焼入れは、材料表面に窒素を浸して窒化物を形成させる焼入れです。この窒化物に起因して、材料の硬度が向上します。窒化物による硬度向上を狙う場合、鉄鋼材料に含まれる添加元素の種類が重要です。具体例には、下記の元素は窒化物を形成するため、硬さの向上に貢献します。
・Al(アルミニウム)
・Cr(クロム)
・Mo(モリブデン)
・C(炭素)
窒化のためには500℃付近の温度で熱処理するため、比較的低い温度で処理を施すことになります。そのため、処理に時間がかからず、寸法精度も優れることがメリットです。さらに、窒化物が形成されると、高い摩耗性が得られたり疲労特性が向上したりするため、様々な用途で窒化焼入れが使用されます。
・Al(アルミニウム)
・Cr(クロム)
・Mo(モリブデン)
・C(炭素)
窒化のためには500℃付近の温度で熱処理するため、比較的低い温度で処理を施すことになります。そのため、処理に時間がかからず、寸法精度も優れることがメリットです。さらに、窒化物が形成されると、高い摩耗性が得られたり疲労特性が向上したりするため、様々な用途で窒化焼入れが使用されます。
焼入れの注意点
焼入れを実施する際、いくつか注意点があります。例えば、気をつけるべきポイントは以下のとおりです。
・なるべく低温で熱処理する
・加熱時間に注意する
・冷却方法を工夫する
一般的に高温で熱処理すると、材料の結晶粒が成長して硬さが低下する現象が見られます。このほか、熱処理中に酸素と炭素が結合して、表面の炭素量が減少する可能性があります。これは「脱炭」と呼ばれ、材料が割れたりクラックが発生しやすくなったりするため要注意です。そのため、できる限り低い温度で熱処理すると良いでしょう。
加熱時間は、熱処理した材料の特性に影響を及ぼす因子の一つです。例えば、加熱時間が不十分だと、熱処理時にムラが発生することがあります。一方、長時間加熱すると、酸素と炭素が反応しやすくなり、脱炭が生じてしまいます。熱処理する材料に合わせて、適した時間範囲内で焼入れするようにしましょう。
冷却する際は、冷却速度を意識して水や油を使用することも重要です。これらの冷却方法は、ガスや空気による冷却速度よりも速いことが特徴です。また、ムラを防ぐために均一に冷却することも欠かせません。材料が均一に冷却できるように、冷却中に適宜材料を動かすことも必要です。
・なるべく低温で熱処理する
・加熱時間に注意する
・冷却方法を工夫する
一般的に高温で熱処理すると、材料の結晶粒が成長して硬さが低下する現象が見られます。このほか、熱処理中に酸素と炭素が結合して、表面の炭素量が減少する可能性があります。これは「脱炭」と呼ばれ、材料が割れたりクラックが発生しやすくなったりするため要注意です。そのため、できる限り低い温度で熱処理すると良いでしょう。
加熱時間は、熱処理した材料の特性に影響を及ぼす因子の一つです。例えば、加熱時間が不十分だと、熱処理時にムラが発生することがあります。一方、長時間加熱すると、酸素と炭素が反応しやすくなり、脱炭が生じてしまいます。熱処理する材料に合わせて、適した時間範囲内で焼入れするようにしましょう。
冷却する際は、冷却速度を意識して水や油を使用することも重要です。これらの冷却方法は、ガスや空気による冷却速度よりも速いことが特徴です。また、ムラを防ぐために均一に冷却することも欠かせません。材料が均一に冷却できるように、冷却中に適宜材料を動かすことも必要です。
焼入れ品の加工
焼入れ品の加工では、工具摩耗に注意しなければなりません。なぜなら、焼入れ後の材料は硬度が高く、工具に大きなダメージを与えてしまうからです。使用する工具は、コーティング加工が施されたものを使用したり、刃先の強度が高いものを選定したりするようにしましょう。
また、加工時は加工速度を遅くするといった対策が欠かせません。焼入れ品の加工は、材料や加工の専門知識が必須ですので、実績と経験が豊富な企業へ依頼することをおすすめします。
また、加工時は加工速度を遅くするといった対策が欠かせません。焼入れ品の加工は、材料や加工の専門知識が必須ですので、実績と経験が豊富な企業へ依頼することをおすすめします。
まとめ
焼入れは、材料の強度を向上するための熱処理のことで、高温で処理した後に急速冷却します。焼入れには様々な種類があるため、用途に適した方法を選び、正しい温度範囲・処理時間・冷却方法で実施すると良いでしょう。また焼入れ品の加工は難しいため、加工経験が豊富な企業に依頼することがおすすめです。フィリールでは、難加工材でも加工実績が豊富ですので、加工でお困りの方は気軽にご相談ください。