フェライト系ステンレス鋼は、冷間加工性や溶接性に優れるステンレス鋼で、SUS430が代表的な合金です。これらの合金は、耐食性が求められる用途に幅広く使用されています。本記事では、フェライト系ステンレス鋼の特徴や加工方法、主な用途について詳しく解説します。合金の特徴を正しく把握して、加工に活かしたい方はぜひ参考にしてください。
フェライト系ステンレス鋼とは?
フェライト系ステンレス鋼とは、室温状態で「フェライト」と呼ばれる組織から構成されている合金です。この合金の主な特徴は、冷間加工性と溶接性、耐食性に優れていることです。
フェライト系ステンレス鋼の種類
様々な用途に適した特性を発現させるため、添加元素を加えることで新規合金の開発が進められてきました。
例えば耐食性を向上するためにTi(チタン)やNb(ニオブ)を加えたり、耐酸性の向上のためCr(クロム)を添加したりします。このように添加元素を加えて開発されたフェライト系ステンレス鋼は、以下のとおりです。
・SUS430:代表的なフェライト系ステンレス鋼
・SUH409:CrとTiを含み、加工性に優れる
・SUH409L:SUH409に含まれる炭素量を低減し、加工性と溶接性を向上
・SUS405:CrとAl(アルミニウム)を含み、耐酸化性を向上
・SUS410L:炭素量を低減し、加工性が良好
・SUS429:耐食性に優れる
・SUS430F:S(硫黄)を添加し、被削性を向上
・SUS430LX:CrとTi、Nbを含み、加工性と溶接性を向上
・SUS430J1L:Cu(銅)が含まれ、耐食性を向上
・SUS443J1:Cr量増加とCu添加により、高い耐食性を示す
・SUS434:Mo(モリブデン)添加により、耐食性を向上
例えば耐食性を向上するためにTi(チタン)やNb(ニオブ)を加えたり、耐酸性の向上のためCr(クロム)を添加したりします。このように添加元素を加えて開発されたフェライト系ステンレス鋼は、以下のとおりです。
・SUS430:代表的なフェライト系ステンレス鋼
・SUH409:CrとTiを含み、加工性に優れる
・SUH409L:SUH409に含まれる炭素量を低減し、加工性と溶接性を向上
・SUS405:CrとAl(アルミニウム)を含み、耐酸化性を向上
・SUS410L:炭素量を低減し、加工性が良好
・SUS429:耐食性に優れる
・SUS430F:S(硫黄)を添加し、被削性を向上
・SUS430LX:CrとTi、Nbを含み、加工性と溶接性を向上
・SUS430J1L:Cu(銅)が含まれ、耐食性を向上
・SUS443J1:Cr量増加とCu添加により、高い耐食性を示す
・SUS434:Mo(モリブデン)添加により、耐食性を向上
フェライト系ステンレス鋼の特徴
フェライト系ステンレス鋼の代表鋼種「SUS430」を例にして、特徴を紹介します。SUS430はCrを含んでいるため、耐食性に優れています。なぜなら、Crが酸化皮膜を形成することで、ステンレス鋼内部に酸素との接触を防ぐ役割を果たしているためです。
また、オーステナイト系ステンレス鋼の代表鋼種「SUS304」に比べて、磁性を有する特徴があります。さらに加工時に変態(組織が変化すること)が生じないため、加工性は良好です。
フェライト系ステンレス鋼は、焼入れ性に乏しい性質があるため、熱処理による靭性の向上は期待できないので要注意です。機械的特性の向上のためには、熱処理ではなく添加元素の種類や添加量のコントロールが欠かせません。具体的には、焼入れによる高強度化の代わりに、Nb添加によるフェライト組織の強化などの手段が効果的です。
また、オーステナイト系ステンレス鋼の代表鋼種「SUS304」に比べて、磁性を有する特徴があります。さらに加工時に変態(組織が変化すること)が生じないため、加工性は良好です。
フェライト系ステンレス鋼は、焼入れ性に乏しい性質があるため、熱処理による靭性の向上は期待できないので要注意です。機械的特性の向上のためには、熱処理ではなく添加元素の種類や添加量のコントロールが欠かせません。具体的には、焼入れによる高強度化の代わりに、Nb添加によるフェライト組織の強化などの手段が効果的です。
フェライト系ステンレス鋼の加工方法
フェライト系ステンレス鋼の加工方法は、用途に適した手段を選択することが大切です。主な手段として、以下の加工方法があります。
・切削加工
・切断加工
・曲げ加工
・溶接加工
ただし、ステンレス鋼の加工では確認すべき注意点があるので、確認しておきましょう。
・切削加工
・切断加工
・曲げ加工
・溶接加工
ただし、ステンレス鋼の加工では確認すべき注意点があるので、確認しておきましょう。
ステンレス鋼の加工における注意点
ステンレス鋼の加工では、次の3つの理由から加工が難しいとされています。
・加工硬化しやすい
・熱伝導率が低い
・工具に金属くずが付着しやすい
ステンレス鋼は一般的に、加工硬化(材料を加工すると硬度が向上する現象)が生じるため、加工前よりも硬さが上昇します。材料が硬くなると、切削に使用している工具にダメージを与えてしまうため注意が必要です。工具が傷むだけでなく、生産性が低下して加工時間が長くなることも懸念されます。
2つ目の注意点は、ステンレス鋼の熱伝導性が低いことです。熱伝導性が低いと、加工時に発生した熱が外部に逃げられないため、熱影響を受けることになります。そのため、熱を逃がすために、切削速度を調整したり冷却油を使用したりすることが欠かせません。
またステンレス鋼の金属くずは、工具に付着しやすい性質があります。金属くずが工具に付着した状態では、加工精度が低下し寸法精度のずれや品質低下につながる可能性があります。したがって、加工時には知識を活かした工夫が必要です。フィリールでは、加工実績が豊富であり、ステンレス鋼の加工も受託できますので、お気軽にご相談ください。
・加工硬化しやすい
・熱伝導率が低い
・工具に金属くずが付着しやすい
ステンレス鋼は一般的に、加工硬化(材料を加工すると硬度が向上する現象)が生じるため、加工前よりも硬さが上昇します。材料が硬くなると、切削に使用している工具にダメージを与えてしまうため注意が必要です。工具が傷むだけでなく、生産性が低下して加工時間が長くなることも懸念されます。
2つ目の注意点は、ステンレス鋼の熱伝導性が低いことです。熱伝導性が低いと、加工時に発生した熱が外部に逃げられないため、熱影響を受けることになります。そのため、熱を逃がすために、切削速度を調整したり冷却油を使用したりすることが欠かせません。
またステンレス鋼の金属くずは、工具に付着しやすい性質があります。金属くずが工具に付着した状態では、加工精度が低下し寸法精度のずれや品質低下につながる可能性があります。したがって、加工時には知識を活かした工夫が必要です。フィリールでは、加工実績が豊富であり、ステンレス鋼の加工も受託できますので、お気軽にご相談ください。
切削加工
切削加工は、工具を用いて加工する方法です。寸法精度が高く、精密な加工に適しています。使用する工具には様々な種類があり、一例を下記にご紹介します。
・汎用フライス
・NCフライス
・マシニングセンタ
・汎用旋盤
・NC旋盤
手動で加工する汎用フライス・汎用旋盤のほか、コンピューターで制御するNCフライス・NC旋盤を使用するのが一般的です。
・汎用フライス
・NCフライス
・マシニングセンタ
・汎用旋盤
・NC旋盤
手動で加工する汎用フライス・汎用旋盤のほか、コンピューターで制御するNCフライス・NC旋盤を使用するのが一般的です。
切断加工
切断加工は、加工物を切り離す際に使用されます。切断方法は、下記の種類があります。
・ガス切断
・機械切断
・ウォータージェット切断
・プラズマ切断
・レーザー切断
レーザー切断は、以前はステンレス鋼を加工するのが困難でしたが、近年では加工しやすい工作機械の技術進歩が進んでいます。加工したい材料に合わせて、それぞれ適した加工方法を用いると良いでしょう。
・ガス切断
・機械切断
・ウォータージェット切断
・プラズマ切断
・レーザー切断
レーザー切断は、以前はステンレス鋼を加工するのが困難でしたが、近年では加工しやすい工作機械の技術進歩が進んでいます。加工したい材料に合わせて、それぞれ適した加工方法を用いると良いでしょう。
曲げ加工
曲げ加工は、板材に負荷をかけて曲げながら製品を仕上げる方法です。V字やU字、L時など、様々な形状に自在に加工できます。曲げ加工時の割れを防ぐため、材料にかかる応力を低減したり、延性を向上したりする工夫が必要です。
また、曲げ加工後に材料が元の形状に戻ろうとする「スプリングバック」が生じる可能性があるため、加工時の曲げ角度を調整する必要があります。
また、曲げ加工後に材料が元の形状に戻ろうとする「スプリングバック」が生じる可能性があるため、加工時の曲げ角度を調整する必要があります。
溶接加工
溶接加工は、2種類以上の金属を溶融して接合させる加工方法です。金属の融点以上に昇温するため、熱源に「アーク」や「レーザー」が使用されます。特にフェライト系ステンレス鋼は、溶接性に優れているので適した加工方法の一つです。
フェライト系ステンレス鋼の組織
フェライト系ステンレス鋼は、フェライト組織のみで構成されているため、高温に保持すると結晶粒が粗大化しやすい傾向にあります。そのため、熱処理の際は延性や靭性が低下する可能性があることを考慮すると良いでしょう。
また、Cr量が多いフェライト系ステンレス鋼は、600~800℃に加熱すると「σ(シグマ)相脆化」が生じます。FeとCrからなり金属間化合物(σ相)が形成されることで、材料が脆くなってしまいます。したがってCrやMoが多く含まれているステンレス鋼は、σ相脆化に注意が必要です。
このほか、475℃付近で脆化が見られる「475℃脆化」にも気をつけなければなりません。この現象は、Cr元素が偏析するために生じます。475℃脆化を防ぐために、熱処理の条件を適切に検討することが重要です。
また、Cr量が多いフェライト系ステンレス鋼は、600~800℃に加熱すると「σ(シグマ)相脆化」が生じます。FeとCrからなり金属間化合物(σ相)が形成されることで、材料が脆くなってしまいます。したがってCrやMoが多く含まれているステンレス鋼は、σ相脆化に注意が必要です。
このほか、475℃付近で脆化が見られる「475℃脆化」にも気をつけなければなりません。この現象は、Cr元素が偏析するために生じます。475℃脆化を防ぐために、熱処理の条件を適切に検討することが重要です。
フェライト系ステンレス鋼の用途
フェライト系ステンレス鋼は、加工性や耐食性に優れることから、様々な用途に使用されています。例えば、下記の用途です。
・電気用品
・建築用部品
・自動車用部品
・化学プラント
C量とN(窒素)量を減らして耐食性を向上したステンレス鋼は、応力腐食割れが懸念される環境下でも使用でき、化学プラントなどに用いられています。
・電気用品
・建築用部品
・自動車用部品
・化学プラント
C量とN(窒素)量を減らして耐食性を向上したステンレス鋼は、応力腐食割れが懸念される環境下でも使用でき、化学プラントなどに用いられています。
まとめ
フェライト系ステンレス鋼は、加工性や耐食性に優れている合金で、自動車用部品をはじめとして幅広い用途に活用されています。ステンレス鋼の加工時には、材料の知識と加工の経験が重要であり、一筋縄で加工するのは困難です。加工でお困りの方や、ステンレス鋼を望みどおりに加工したいと考えている方は、フィリールまでお問い合わせください。