金属の旋盤加工はあらゆる部品加工で活用されています。しかし、依頼する会社によって見積もり費用や使用する素材、切削の品質まで大きく違いがあり、調達担当者はその都度相見積もりをとり、何度も加工会社と交渉しなければなりません。
そこで、ここでは信頼できる旋盤加工会社の条件やおすすめしたい選び方、注意点などを解説します。
目次
同じ図面でも旋盤加工会社によって切削工程は違う
旋盤加工会社といっても、企業や工場の規模や事業方針などが異なれば、金属加工方法も大きく変わります。「図面はこちらで用意したから、同じように加工してくれれば、どこの旋盤加工会社でも完成品は同じでしょ?」と考えるかもしれませんが、旋盤加工会社によって所有している工作機械は違いますし、技術者によって得意とする加工方法も異なります。そのため、完成品にたどり着くまでの工程は、実は旋盤加工会社によって差異があるのが普通です。
精度・交差によって見積費用が極端に変わる旋盤加工会社は注意が必要
一般的に利用する旋盤加工は汎用旋盤、NC旋盤、マシニングセンタとなりますが、精度や交差、数量によっては、さらに上位スペックとなる5軸加工機や複合加工機、レーザー加工機などを使用しなければならないこともあります。
使用する工作機械が高価になれば、それだけ「機械チャージ」が発生しますが、相見積もりをかけてみて、他社と比較して異様に金額の高い会社は少し注意が必要です。
小さな町工場では上述した高価な工作機械は所有していないところも多いので、5軸加工が必要な場合は、提携先の切削業者に依頼する、ということも普通にあります。その場合は運搬費や梱包費もかかってくるので、通常よりも費用が上乗せされます。
柔軟な対応をしてくれる。コストダウンの提案をしてくれる旋盤加工会社を探す
技術者揃いの町工場の旋盤加工会社の場合、見積もり費用や納期はなかなか融通が利かないこともあります。しかし、金属加工はメーカーと製造業が二人三脚でお互いの理解を深めなければ、本当にいい加工はできません。
多少無理な納期にも柔軟な対応をしてくれたり、見積もりが予算をオーバーしていた場合は、加工会社の方からコストダウンの提案をしてくれる。そんな旋盤加工会社と契約するのがおすすめです。
図面を見直すだけで大幅なコストダウンができるケースも
見積もり費用が予算を超えてしまった場合は、単純な値引き交渉をするのではなく、図面を一度加工会社の担当者と一緒に見直してみるのがおすすめです。
加工費用は切削工程の数が多ければかさんでしまいますし、また、複雑な形状の切削が発生する場合もコストがかかります。旋盤加工会社の担当者によっては、図面を一から制作して、同じ規格でコストダウンできるシンプルな工程に作り直すこともあります。
精度・交差を見直してみるのがおすすめ
設計図だけではなく、切削に求める精度と交差も併せて見直してみてください。半導体のような精密加工であればまだしも、一般的な製品の場合、多少精度や交差を緩めても規格に合う場合が多くあります。
旋盤加工会社が独自の素材(材質)の調達網を持っているかも重要
2020年の新型コロナより、金属素材全般が価格を押し上げ、いわゆる素材インフレが発生しています。2022年になると、ウクライナ紛争をはじめ、米国の利上げと円安がさらに背中を押し、物流価格が高騰しているのが現状です。
一般的な旋盤加工会社は、金属素材を日系の商社や販売店から仕入れていますが、昨今は2022年以降は相次いで仕入れ価格が値上げし、コロナ前の1.2~1.5倍、材質によっては2倍近くまで高騰している例もあります。
そのため、旋盤加工会社を選ぶ際は、日本の商社を介さないで独自の調達網を持ち、海外のサプライヤーから直接調達することができる業者を選ぶのがいいでしょう。
弊社フィリールも商社を介さず中国や韓国から直接仕入れているため、このご時世でも安定した数量と価格を維持することができています。
小ロット&試作品を請け負っている業者を探す
試作品を打ち合わせから素材調達、不良率などを鑑みて見積もり費用を決めますが、基本的に旋盤加工会社が享受できる利益はほとんどありません。そのため、「本生産の依頼を条件に試作品は無料で作ります」という加工会社も多くあります。
しかし、メーカーからすると、試作品の段階で本生産の契約はしたくないのが本音です。場合によってはデザインや仕様を大幅に変更したり、製品化が頓挫することもあります。
小ロットや試作品を断らずに請け負う旋盤加工会社は、顧客の立場に立った仕事に徹することができる優良業者であり、小ロットでも利益を出すことができるアイデアと技術を兼ね備えた会社と判断することができるでしょう。